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最終話
「佐藤くん、お待たせ。打ち合わせ終わったから、そろそろお昼ごはんに――」
「ぎゃあッ」
「え、あ……ああっ!? わ、わわわわ悪い! い、今出てく……!」
「あ、理人さん! 待っ……おひゃッ!?」
うん、そうだ。
そうだった。
ちょうどワイヤレスイヤホンが欲しいなあ……なんて思ってたところだったんだ。
だってそれなら、こんな風にコードに手が引っかかって、勝手に引っ張っちゃって、スマホからイヤホンが抜けてしまうなんてことも、なくなる――…って、嘘だろ、そんな!
『あ、だ、だめッ、いく、もう、いくぅ……っ』
「……」
「……」
『あっ、やだっ……やだやだ、やめないで……!』
「………」
「………」
『えるので、おれをイかせてぇ……あ、あ、ああぁあん……ッ』
「…………」
「…………」
……パタン。
「って、理人さん! 待って! 無言で出て行かないでえぇ〜っ!」
**
その後、必死の謝罪と懇願の甲斐もなく、件の動画は削除されてしまった。
さらに、
「理人さん、ごめんなさいってば……!」
「うるさい、変態!」
「理人さぁん……っ」
俺は一週間もの間、理人さんから『変態』と罵られ続けたのだった。
「次は絶対ワイヤレスイヤホンでやろう……」
「そういう問題じゃないだろ、ばか!」
「あでッ!」
fin
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