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第8話

 一週間後。 「うーん、そこの根拠がちょっと弱いな。できれば昨対だけじゃなくて、現行の制度が導入される前のデータと比較できれば、説得力が変わると思うんだけど」 『七年前だと、まだデータ化されていないかもしれません……』 「そうだな。次に出社した時にでも、倉庫、見てみるか。紙なら残ってるはずだから」 『はい!』  仕事中の理人さんは、かっこいい。  ものすごくかっこいい。  情勢がだいぶ落ち着いて理人さんも週の半分はオフィスに出勤するようになったけれど、もう半分は在宅での勤務が続いている。  最近は、延期になっていた社内コンペの予選がいよいよ始まったとかで、部下の論文の執筆を手伝っているらしい。  今日も部下に泣きつかれ、ビデオ通話を繋いでアドバイスしていた。  最初はしょんぼりしていた部下の彼も、理人さんと話を進めていくうちに、どんどん声のトーンが明るくなっていく。 一 緒に過ごせる時間を奪われて寂しくもあるけれど、部下のためにあっさり休日を返上できてしまう理人さんが俺は好きだし、そんなかっこいい理人さんがあーんな顔やこーんな顔を見せてくれるのは俺の前だけだって分かっているから、まあいっか……なんて思ってしまう。  あ、やばい。  なんかムラムラしてきた。  真剣な顔でパソコンとにらめっこしている理人さんの背中を見届け、俺はこっそりリビングを出た。  寝室に入り、扉を閉める。  そして、スマートフォンの画面を繰り、それを呼び出した。  一週間前に撮影した、理人さんの『ハメ撮り動画』を。 「止めました」と宣言したあの時、実はのだ。  スマホの画面をあえて下にしてサイドボードに置き、撮影ボタンをこっそりオンに戻していた。  だから、画面は真っ暗……だけど、 『あ、あぁっ、佐藤くん、奥はやだっ……やだぁッ』  こんな感じで、音声はバッチリ残っちゃったりしている。  俺はベッドに寝転がると、いそいそとズボンのチャックを開け広げた。  もうすでにバンツに小さなシミを作り出していたせっかちな息子を取り出し、握りしめてスタンバイする。  そして、イヤホンを装着し、再生ボタンを押した。 『んっ……あ、あ、あぁん……ッ』  う、わ。  うわ、うわっ。  うわあ。  これはやばい!  腰に来る……! 『あ、ひぁ、あ、あっ……!』  ノイズのない閉ざされた世界に、理人さんの矯声だけがひたすらに響く。  俺が撮影を止めた(フリをした)後、理人さんはたがが外れたように積極的に喘いだ。  それまで一生懸命我慢していた分が、一気に溢れ出たのかもしれない。  おかげでハメ撮り動画……もとい、ハメ撮り音声は、それ以上ないくらい最高のクオリティに仕上がっていた。 『える……えるぅ……もっとぉ……!』  耳の中に直接注ぎ込まれる濡れた声が、背骨伝いに駆け下り、下半身に到達した。  すでに起ち上がり震えていた先端を火照らせ、透明な露を溢れさせる。  トロリと零れたそれは、竿を伝い、親指の付け根に落ちた。 『ひゃっ……あっ……い、いい……!』  手を上下させるたびに、ぬちぬちと粘着いた音がする。 『うんっ……そこ、きもちい……あ、あッ』  ああ。  だめだ。  これは。  もう。 『える……すきッ……だいすきぃ……っ』  もたない。  理性を手放してしまえば、あとはもうただ扱くだけだ。  本能に導かれるまま、昇りつめる。  理人さん。  思考のすべてを、愛しい人の名で満たしていく。  そうすれば、絶頂はもう、すぐ目の前。  理人さん。  理人さん。  理人さ――  コンコン。  ……え。  ガチャ。  え、ちょッ……!?

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