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第4話(トム)

この世の欲しい物は全て手に入る。 金、地位、権力、女。 そう、僕には特別な力がある。神が僕に授けたギフトだ。 やあ!僕はトム•コーヴィン。 僕の事、知ってるって?ああ、そうかもしれない。最近フォーブスの表紙を飾ったばかりだ。 世界の富豪ランキングでは常にトップ10。 僕が一から始めたM &Aコンサルティング会社は瞬く間に世界的企業にのし上がった。 今では買収、合併を繰り返し関連企業は数百社。総資産は2兆円を超えた。 コンサルティング業界から今ではホテル産業、エネルギー産業、航空産業、宇宙開発産業にまで手を伸ばしている。 所有する不動産は数百。自社ビルもホテルも持っている。 船もジェットも宝石も。何なら島だって所有している。 もし僕に手に入らない物があるとしたらただ一つ。愛かもしれない。 「本当に最悪」 不本意な徒歩移動中に、追い越し様肩がぶつかった男が呟いた。 日本語か、、、 しばらく歩いて気付いた。 聞こえない!!! 僕は勢いよく振り返ると、ぶつかった男の元へ舞い戻った。 確かめないと!!! 「やあ、キミはニホンジンかい?」 「え?」 まだ子供か。10代だろうか。 「僕はトム」 握手の手を差し出す。 「はぁ、、、」 少年は驚いた顔で手を握り返した。 やっぱりだ!!! 頭の中が読めない!!!何も聞こえない!!! 「君、この後予定は?一緒にディナーへ行かないかい?」 僕への神様からのギフト。それは、触れた相手の心が読める事だ。 そして、今目の前に居る少年の心だけが唯一読めないのだ。

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