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第12話(トム)
雑音がしない会話は最高だ。食も進むし、何より楽しい。
カイトは想像以上に面白い子だ。
こんな楽しいディナーは久々だった。
「家まで送るよ」
「いや、いい。あんたの高級車で家まで行ったら親父が卒倒する」
「じゃあ、連絡先を教えてくれ!また会いたい」
「え?何で?嫌だよ」
まさか、この僕をフル人間が存在するとは!!!!
「じゃあ、コレ!僕の連絡先!連絡待ってる」
名刺の裏にプライベートの番号とアドレスを書いて無理やり渡した。
「何なのあんた、日本語の話し相手なんてすぐ見つかるでしょ?」
「君と話したいんだ!君だけ!君しかいない!必ず連絡するように」
「じゃあね、バイバイ大富豪さん」
カイトは足取りも軽く僕の前から消えた。
こんな経験初めてだ。
誰かに追いすがるなんて。この僕が。
「ボス、あのガキに何があるんですか?」
ウィルも不思議そうだ。
「何も、何も無いから良いんだ」
そう、策略も心理作戦も陰謀も思惑も。
彼こそ求めていたもの。
カイトを手に入れたい。
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