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嫌な予感 ★

 いつものことだが、午前中は本当に忙しなく過ぎる。    外来患者の子供たちは、重症患者は少ないけれど、それ故に不安がって泣き叫んだり、暴れたり、震えたり、ある意味元気な子が多い。  注射1つにしても、スタッフ1人で相手にすることは難しい。医者と看護師数人で1人の子供の対応などに当たっていると、あっという間に時間が経ってしまう。  今朝も予定時間を15分ほど超えて午前中の診察時間が終了した。15分で済んだのはかなりマシな方だった。  俺は昼食を取るためにスタッフルームへと急いだ。途中の売店でパンを購入する。  そこでふと、今朝、宗介と休憩時に落ち合う約束をしたことを思い出した。歩きながら携帯を取り出し、宗介へと電話をかける。  手術中や入院患者に対応中であれば電話には出ないだろう。俺よりもスケジュールが不規則な宗介なのでたぶん出ないだろうな、と思っていたが。 『新太?』  宗介は数コールで電話に出た。 「うん。今、休憩入ったけど。お前は?」 『俺も今、休憩中。ちょっと前にオペ終わって』 「タイミングよかったな。じゃあ、どうする?」 『こっち来るか? 今、当直室借りて休んでんだけど』 「……分かった、行くわ」 『後でな』  電話を切って、小児科病棟から外科病棟へと方向転換する。 『今、当直室借りて休んでんだけど』  嫌な予感がする。するけど。  その予感を信じるよりも。宗介に会いたい気持ちが勝った。  で。こうなるわな。 「んぅ……ん……」  当直室に到着して1分も経たず。素早く部屋に鍵をかけられて、宗介に抱き締められた。そのまま、両手で顔を挟まれて、最初から激しく口内を犯された。  嫌な予感は見事的中した。  ここ何日もプライベートで会えていなかったから、宗介に限界が来ていることは薄々分かっていたことだった。きっと最初からこうするために、当直室を借りて待っていたのだろう。  職権乱用じゃん、ほんと。  そう心の中で思うが、それを口に出す余裕はない。 「ちょっ……そう……すけ……待って……ん……」  なんとか一旦落ち着かせようと試みるが全く効果はなかった。両腕で宗介の肩を掴んで押してみるがびくともしない。  ほんと、馬鹿力なんだよな。  舌を執拗に絡ませてくる。くちゅくちゅと唾液の音が狭い当直室に響いた。  スイッチが入ると、宗介はなかなか止まらない。それを痛いほど知っていた俺は諦めてキスぐらいは好きにさせることにした。  体の力を抜いて、宗介の甘いキスに集中する。  この男には本当に欠点がないのかと思う。キスも。セックスも。俺が今まで経験してきた中では(少ない経験だけども)断トツに上手かった。

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