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後編
パーティーはお開きになったが、遥は隆人に手を握られて、ホテルの中を移動した。護衛の二人も付いてくる。
「どこ行くんだよ。帰らないのか」
連れて行かれたのはインペリアルスイートルーム。ラウルたちとの会食の場にもなった、加賀谷がずっと押さえている部屋だった。
メインベッドルームに導かれた赤ずきんは、狼と向きあった。
「こういう趣向か」
隆人が唇の両端を上げた。
「たまにはいいだろう?」
「確かに」
頭巾とケープを取られた。キスを何度も交わす。
スカートの中に手が差し入れられ、剥き出しの腿に触れられた。びくんと体が跳ねる。スカートがまくり上げられ、レース飾りの下着がさらされた。
「これはまた、可愛らしい」
レースの上から高ぶりを撫でまわされた。
「焦らすなよ、恥ずかしいんだから」
口を尖らすと、隆人が笑った。遥から体を離すと着ぐるみの前ファスナーを一気に下ろした。
「熱かった」
狼も、肌着や下着も脱ぎ捨てた隆人が遥の上に戻ってくる。
「俺も脱ぎたい」
「脱がす楽しみは譲らん」
首筋に唇が這い、ベストとブラウスのボタンが外される。
ツンと立ちあがった胸粒を執拗に舐られ、もう一方を爪で弄られる。その感覚が電流のように身体を走り、下着が濡れていく気持ち悪さに、腰をうごめかした。
「誘っているのか?」
からかいに遥は隆人の耳を引っ張った。
「焦らされるのは嫌いだ」
「わかった、わかった」
ナイトテーブルからジェルが出てくる。
ここはセックスのための部屋なのだと、遥は悟った。
白い下着が引き脱がされ、うつ伏せにされた。膝を曲げて、尻だけ上げさせられた。かーっと全身が熱くなる。
「恥ずかしいぞ」
「この方が慣らしやすい」
隆人の指でジェルが塗り込められ、拡げられていく。
「服を脱ぎたい」
喘ぎ喘ぎ訴えたが、隆人はうんと言わなかった。
指先が優しくあの位置を撫でるように揉む。
「んあっ、あ、うぅ、うん……あ、ひ、くぅ」
こうなると遥にはどうにもならない。もう前の昂ぶりは、シーツに染みをつけている。
「あぁ、はや、く……じらす、なって」
そう言いつつ、抜かれる指を惜しむように締めつけてしまい、背後から密かな笑いが降ってきた。
「早くしろよ!」
尻を振った。スカートが揺れて、尻にかかる。
「いい眺めだ」
後孔に望んだものがあてがわれた。息を吐いて、力を抜く。ずぶりと拡げられる感覚に一瞬抵抗するが、そこを過ぎれば待ち望んでいた快感に体が震え、絡みつき締めつける。
「貪欲だな」
「じらす、から、だろ?」
隆人の形が出入りするのがありありと分かる。遥の中を味わうように動き回る。
さっき指で揉まれたところを隆人が責めてくる。
「うっ、そこ、そこが、ぁ」
「ここが、どうした?」
「もっと、もっと、いい、か、んじる……いき、そう」
衝動に身を任せようとした遥を嘲笑うかのように、隆人が雄を退いた。
「な、に、すんだよ」
遥は潤んだ目で背後の隆人を睨む。
「もっと楽しめ」
隆人が遥の腰を掴み、リズミカルに抽挿を始めた。
目の前が刺激に合わせて白くスパークする。
「揺れる赤い、スカートに、白い尻が映えて、綺麗だぞ、遥」
「へ、ん、たい」
「まだもっと、責めてやる。凰が、浮かぶまでな」
遥の中は隆人の張りつめて充実したものを、しっかりとくわえこみ、血管すら感じてるのではと思うほどに絡みついている。それを強引に擦られ、遥の声がいっそう嬌くなった。
「あ、あぁ、あつい、中が、焼ける、たか、ひ、とぉ」
水音が激しくなり、奥まで突きあげられる。何も考えられない。気持ちよすぎて、後はもう頂に登りつめるしかない。遥は頭を振った。
「も、もう、だめ、いく、いく、いっ」
「いけっ、遥!」
「ああぁぁぁーっ」
遥は意識が飛びかけるのを感じた。
余韻にぼんやりしている間に、世話係が遥の衣裳を脱がせている。
隆人は結局遥に着せたままだった。
「……脱がす楽しみは譲らん、とか言ってなかったっけ?」
水を飲んでいる隆人は平然としている。
「気が変わった。スカートが揺れるのが、可愛かったのでな」
遥にも水が渡され、喉を鳴らして飲む。
「まったく、わがままだな」
俊介が二人分の衣裳を持って寝室を出ていき、バスルームを見に行った喜之は、すぐ戻ってきた。
「お風呂のご用意ができました」
隆人が手を差し伸べてきたので、遥は手をのせた。二人で外の見えるバスルームへ入った。
シャワーを浴びる。体を洗いあうだけで、また高まった二人の欲望を、隆人が掴んで扱く。足腰が快感に震えてくる。今度は焦らされることなく、隆人とともに一気に上りつめ、その腕に支えられた。
風呂の中で遥は隆人を見た。
「俺たち二人の写真を平気で撮らせていたけど、よかったのか?」
「彼らはもう、俺のパートナーはお前だと思っている。俺の妻は『病弱』で表に出られないこともな」
遥は前を向いた。
「隆人がいいなら、俺はいいけど。あいつは?」
隆人は無言だった。
「のぼせるから、先に出る」
立ちあがった遥を、やはり立った隆人が背後から抱きしめた。遥は少し笑って、隆人の腕を軽く叩いた。
「大丈夫だ、俺たちは。あんたを守るよ」
遥は振り向いて、隆人に口づけた。
遥は翌日、ラウルに狼姿の隆人と撮った写真を送った。さぞ笑ってくれたことだろう。
十月下旬、ラウルから遥宛に荷物が届いた。中を開けると、極彩色の布地が目に飛び込んできた。
添えられたメッセージカードには『これも似合うと思うぜ』と、書かれていた。
そして箱の中のものを持ち上げると、ピンク地に丹念に刺繍の施されたミニのチャイナドレスだった。
「ラウルの奴ー!」
面白がられていることに、地団駄を踏んだ。
「この柄は鳳凰ではございませんか?」
「え?」
俊介の言葉に遥はドレスを改めて見る。
「他にも吉祥の象徴が刺繍されております。遥様のことを気にかけてくださっているのでございましょう」
遥は、遠くから幸せを祈ってくれていることに胸が熱くなった。
滑らかな絹地をやさしく撫でる。
「それにしても、チャイナドレスはないだろう?」
「小蓮様はよく女装なさいますから,遥様もお似合いになるとお考えなのかもしれませんね」
俊介が澄ました顔で続けた。
「着用された写真をお送りしないと」
遥は唸った。
かくして十月末のラウルの許には、ミニのチャイナドレスに身を包んだ、可愛らしい遥の写真も無事届いたのであった。
Happy Halloween!
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