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居場所

完全に意識を飛ばしたあと、顔中にふらせていたキスに、擽ったさを感じて、ゆっくりと重たい眸を上げた。 ダラダラと無駄話をしながら微睡んでいると 「あーー、あのさ、柳田や児嶋の執着ってやつ、あったじゃねぇか。あれなんだけどさ、2人とも同じことをお前に思ってたわけじゃ、ないと思うんだよなぁ。」 後戯をしながら、唐突に敬吾が言い出した。 「児嶋の場合は、おまえを見た時からの一目惚れから始まってるんじゃないか、と思う。抱いていて思ったんだがな、おまえ、征服欲をそそるんだよ。柳田が落ちたのもそこかもしれねぇな。ただ、あいつの場合は、その前におまえに対する愛情も強かったんだな。」 敬吾のことも好きだ。けれど、自分の中での一番は、徹には変わりない。 「敬吾はどっち?」 「俺か?俺は段々とだな。『難攻不落のプリンス』がどんなヤツかを知りたくて、見ているうちに惚れちまった。」 「……なんとなく耳にしたことはありますが、はっきり言って恥ずかしいです。なので、その恥ずかしい表現、やめてもらえます?もう、難攻不落じゃないし。それと、『数年間の想いをしれ』ってどういう意味?」 「知ってるよ。今、俺の腕の中にいるからな。 ……あ〜、それな。俺はずっとおまえが好きだったんだよ。まだ、元気な頃の柳田に微笑んでるおまえを見たこともある。すげぇ妬けた」 そんな言葉に驚きながらも、久しぶりの人肌のぬくもりが心地いい。しかも、奥山は思っていた以上に、しっかりとした筋肉のついている。男としては理想的な体型をしている。 柳田や、児嶋は普通体型だったが、オレは、食事が貧相だった分、その2人よりは痩せてる。 「児嶋には言ったことがあるんだけど、オレは追われるよりも、追う恋愛しか出来ない。だから、あぁいうストーカー染みたやつは好きになれない。最初は先生も、色んなことが雑に見えて、無理だと思ったんだけどね。人はわからないもんだよね。ストーカーではないけど、先生のことは好きだよ。先生は待ってくれていたし、オレを守り続けてくれたからね。」 抱きしめる腕に力がこもる。 「早く医師になれ。そうしたら、俺も出来るだけ、病院に戻る。俺の持つものはすべて与えてやる。おまえは俺を超える医師になれるはずだ。一人でも多くの患者を救え。」 そう言って唇が重なる。大事なものを手放したくない。ゆっくりと互いの腕が互いをひきよせる。その温かい時間に身を委ねる。 「ねぇ敬吾、オレ、敬吾からもう離れられそうにない。こんなセックス知っちゃったら、ほかの誰でも満足出来ないよ。徹も体力が半端なかったけど、敬吾はそれ以上だよ。あのマサキってヤツもそうだったのかな?敬吾が大好きで仕方なかったんじゃない?」 「アイツとはこんなセックスはしてねぇよ。おまえだからたっぷりとサービスしたけどな。本気の俺のセックスはもっとしつこいぞ?覚悟しとけ?やっと手に入れたんだ。俺も最高に気持ちよかった……もう逃がさないからな?」 その言葉にゾクゾクと背中に走る期待感…… 『追われる恋愛は出来ない』自分が、相手を求め、求められる心の支配に悦びを初めて感じている。奥山は満足そうに、俺を引き寄せまた、まだ燻っている、熾火に火をつけるようなキスをする。また、躰に火がつきそうだ。 「……ねぇ、敬吾、オレはもう、喪うのはごめんだ。ずっとそばにいて……」 耳元で、低くて甘い声が囁き返す。 「その言葉、そっくり返す。ずっとそばにいてくれ。もう、おまえなしの人生なんて、考えられない。おまえ以外に興味もわかねぇよ。」 そして、また、キスを繰り返しながら、ベッドでイチャつく。ペニス同士を擦り合わせてただけなのに、射精感が高まっていく…… ――ここにオレの新しい居場所が出来た。 この男のすべてに支配される、という甘い毒に侵された気分だった。

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