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第5話

 すんすん。  すんすん。  なんの音?  窓の外が明るい。ああ、もう朝か。  アヤが宮付に置いていた眼鏡をとって装着すると、リョウが珍しくまだ同じようにベッドにいた。いつもならアヤが目覚める頃には家事を終わらせ、出かける準備まで完了していたりするのに。  そしてすんすん、というのはリョウのすすり泣きだった。 「リョウ」 「うっ……」  べそをかいて恨めしそうにアヤを見つめるリョウ。 「どうしたの」 「今日お出かけの約束してたやん」 「うん、ショッピングって確か」 「――行かれへん」 「そうなの」 「そうなの、やあらへんがな、足腰立たへんの!」 「なるほど」  噛み付くようにリョウが言うも、言われたアヤは飄々としている。 「なるほどて……誰のせいやと」 「約束を果たしてもらったまでだけど」 「誰があんな何回も執拗にしてええって……」 「一回だけ、とも言ってないよね」 「もう! ああ言えばこう言う!」  楽しみにしていたお出かけの予定が反故になってしまってしょんぼりするやら、無茶に抱き潰したアヤに腹立たしいやら。 「じゃあ今日はずっとベッドにいようか」 「俺寝たきりやからお世話してや……」 「うん。俺が上になって動けばいい?」  思わぬ申し出に、お世話ってそういう意味じゃない、とか、それしか頭にないのか?とか、ツッコミどころは山ほどあるにはあるが、それも悪くないと思ってしまうリョウだった。 【おわり】

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