1 / 7

第1話 正樹視点

「もうこんなの要らないのに。」 行為後、水を飲んでいるとベットに寝転んだ恋人がポツリとそう呟いた。 『こんなの』と言って恋人の晴人が触っているのは、晴人の首にぐるりと巻かれた首輪だ。首輪には鎖が付いて、ガッチリとベッドの足に括り付けている。 「信頼されてないみたいで嫌だな。」 「…晴人…。ごめん。俺は晴人が凄く大事だから、怖くて…。」 「ははっ怖いって何が?俺が正樹のものだって印はここにあるだろ。」 晴人はにっと笑って起き上がると、自分の首筋を指差した。そこには正樹の名前が彫られている。 「正樹は心配性だな。」 晴人に手招きされて近寄ると、ぎゅっと抱きしめられた。 「首輪あると、動きづらい。行動範囲を制限されるから、自由に正樹に抱きついたり出来ないし、何より二人の間に隔たりを感じる。それが嫌なんだ。」 晴人は拗ねたようにボヤく。 あぁ、可愛い…。側にいると、じんわりと暖かい。 そんな恋人に、正樹は好相を崩す。 晴人の強気な猫目が伏せられて、人より白い肌がほんのり赤い。きっと自分の言っている事が少し恥ずかしいのだろう。 手を伸ばしてその黒髪を耳にかけてやると、ピクリと動いた耳も真っ赤だった。 「可愛い。」 正樹は蕩けるような笑顔で答えて、晴人にキスを落とした。 その声を聞いて顔を上げた晴人はにこっこりと笑い返してくる。 恋人を愛しているから、信じたくなるし試したくなる。 相思相愛。本物のだと証明したくなる。 だから仕方ない。 「…。」 もう晴人のいない、シンと静まり返った部屋。外された首輪。 それを無表情で見つめ、そんな言い訳を考えた。 晴人は、姿を消した。 平たく言うと、逃げた。 結局、愛はなかった。

ともだちにシェアしよう!