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第7話
「お、晴人さん!」
「あ、拓人…。」
昼下がり外を歩いていると拓人に呼び止められた。
デジャブだ…。
「まーた、どこ行ってたんですか?」
「ん、まぁ…。」
そう言われると思っていた。
毎度このやり取りだな。
「そうですか?今後忙しくなりそうだから、店長もまた晴人さんにヘルプ来て欲しいって言ってましたよ!」
「…うん。」
はな写真スタジオ。拓人と結花の勤める写真スタジオ。
またそこで働きたいが、正樹に知られている場所ではもう働けない。
晴人は曖昧に相槌を打った。
「なんとうちのスタジオ、今度、シーホワイト社と提携して…」
「え?」
「え?なんです?シーホワイト知りません?今話題の超有名企業ですよ!白井正樹と青海賢人のイケメン社長コンビでも有名なあの会社です!今度そことのweb企画もやる予定で…って、晴人さんどうかしました?」
「う、ううん。なんでも…。そうか。…うん。そう。良かったな。」
「?はい…?」
その名前を聞くとまた吐き気がする。きっと顔が青くなってしまったのだろう。
晴人の急な変化に、拓人は首を傾げた。
ブーブー
「あれ、俺のスマホ…晴人さん、ちょっと失礼します。」
「…あぁ…」
「はい、もしもし。」
晴人は茫然と拓人を見つめた。
正樹は、きっと晴人の居場所を、一つづつ潰していくつもりなんだ。晴人が自分の手の中に堕ちるまで。
「…。」
そう思うと、もはや逃げても無駄な気がしてくる。正樹の財力や権力に晴人がかなう気がしない。
もういっそのこと言う事を聞くしかないのか?
そうしたら、せめて外に出して仕事位はさせてもらえるかもしれない。
気持ちが弱くなる。
「晴人さん?」
「…どした?」
不味い。ぼうっとしていた。
気がつけば、拓人がスマホをこちらに差し出してきた。
「何?」
「電話を代わってくれって言われました。驚ですよ!」
「?」
拓人はやけに興奮した様子で、スマホを晴人に押しつけた。
「は、はい。かわりました…」
「こんにちは、急に申し訳ありません。青海です。」
「…あ、あぁ!青海さん!」
電話先に居たのは、昔自分を助けてくれた青海だった。
そうか、この人なら、正樹を止められるかも知れない!
弱っていた気持ちがまた立て直されていく気がした。
青海も、晴人の声を聞き、どこかほっとした様子で続けた。
「なんとか繋がって本当に良かったです。うちの白井がまた晴人さんにご迷惑をおかけした様で…すみません。」
「…っ、い、いえ…」
「その事で折り合って話したいのですが、今夜お時間頂けないでしょうか」
「はい。その事、俺からも少し相談させて下さい。」
結局、今夜青海と二人で会う事になった。
青海はスマホを家に置いてくる様にと、晴人に不思議な指示をした。
前回逃してくれた恩人だ。晴人は青海のその指示にも従うつもりだった。
……スマホを、置いてこい?
ふと目線を上げると、スマホを乗っ取るウィルスアプリ防止ソフトの広告が目に入った。
ITに詳しい、正樹。
晴人の隠れたトイレの個室をピンポイントで当てた、正樹。
『それなのに、なんか昔、晴人さん、結花さんに酷い事言ったでしょ?もう連絡するな的な…。』
身に覚えのない、メッセージ。
『着いたよ〜!長い間、待たせてごめんね。やっと会えるー!嬉しい♡』
結花らしくないメッセージ。
あれは本当に、結花が書いたメッセージだったのか?
晴人の視線が自分のスマホに落ちる。
「…っ」
何故か、カメラレンズと『目が合った』気がして、晴人は反射的にスマホを床に叩きつけ割った。
「はぁっ、なんだ…、なんなんだ⁈」
晴人は頭を抱えてその場に蹲った。
とりあえず、今夜、青海さんに相談して…。
…。
…でも、何故、拓人の電話へ青海が電話を?
何故、拓人と晴人が一緒にいる事を知っている?
「…まさか…」
ブーブー ブーブー
「!」
不意にスマホがなり、晴人は弾かれた様にスマホを見た。
とるか。とらないか。
晴人はその場で固まったまま、動けなかった。
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