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第6話 ※正樹視点

「今度は2週間か。早いですね。」 シンッと静まり返った部屋。 その入り口に立っていると、突然声をかけられた。 振り返ると、共同経営者の青海(おうみ)が立っていた。 「別にー。こんなもんだろ。少なくともあと5回は繰り返さないとだろうし。」 「5回?キャッチアンドリリースですか?いいご趣味ですね。」 「嫌な言い方するな〜。」 嫌味の含みは感じるが、言い得て妙。笑ってしまった。 晴人はまた逃げた。再び入れた刺青が化膿して、病院に連れて行ったら隙をついて逃げられた。 自然な形で逃したって方が、正しいかも知れない。 「このまま逃しちゃうんですか?」 「まさか。ちょっと考えがあって。最初はさ、監禁すればすぐ手に入ると思ったのにさ、晴人手強いから。」 「あぁ、正樹さん、当初は晴人さんの洗脳に勤しんでましたもんね。結局、全て徒労に終わってましたけど。」 「洗脳じゃないです!刷り込みです!」 「それが洗脳です。」 監禁して、外と遮断して弱らせれば、刷り込みなんて簡単だと思った。 実際やってみた。 閉じ込めて、疲弊させて…自分に依存するように追い込んだ。しかし晴人相手では全く上手くいかなかった。 晴人は強固な自分を確立してしていた。周囲に認められて承認要求も満たされているし、全く向かない。 だから方法を変えた。 「今度は何する気なんです?」 珍しく青海が首を傾げる。 青海とは二人でIT企業を立ち上げ、そこそこの企業に成長させた。正樹はITに明るい。 そんな正樹の作ったアプリが、晴人のスマホにはインストールされている。 スマホのカメラを通して晴人の姿は見れるし、通話やメッセージのやり取り、ウェブ検索履歴等も見れる。更に一時間おきに、スマホ画面のキャプチャが送られてくる。 晴人が今何をしているか、分からない事はない。 実際、晴人が結花と上手くいきそうになったらスマホを乗っ取り邪魔をしたり、会いそうになったら捕まえに行ったりした。 勿論、晴人はその事を知らない。 「晴人には諦めて貰うんだ。」 続きを待つ様に、青海がじっとこちらを見つめてくる。 「逃して希望を与えて、捕まえて希望をへし折って。捕まえたら、ちょっとキツ目にお仕置きする。」 「…なるほど。」 正樹の狙いに先回りで気づき、青海が頷いた。 「晴人には、俺と離れる事は無理なんだって、まずはそこを受け入れてもらわないとね。それで、晴人の隣に俺の居場所が出来たら、次の段階かなぁ〜。」 「ふーん。上手くいきますかね。」 「上手くいかせる。」 疑う青海に笑顔で返した。 「そうですか。一番最初も同じ事言っていたのにああだったから、信憑性ないです。」 一番最初。 晴人と正樹は本当に相思相愛だった。 しかしそれは色々な邪魔が入ったせいで、全部ダメになった。 思い出すと、悔しさや怒りで無表情になってしまう。 「さて、それで…次問題が起こるとしたらなんですかね。」 黙る正樹を無視して青海は続けた。 「正樹さんのアプリが晴人さんに見つかるとか?」 「…。」 「それで、正樹さんの企みが晴人さんにバレるとか?」 「…」 「ありきたりですか?それなら、」 「…」 「好きでもない奴に追いかけまされる、可哀想で可愛い可愛い晴人さんの前に、そんな最悪な状況から助けてくれる恩人が現れて、晴人さんがそっちになびくとか?」 「…」 普段、無表情な青海がらしくなくにっこりと笑った。 正樹は目を細めて青海を睨んだ。 3歳年下の青海。何故か昔から関係が続いており、ついには一緒に会社を建ちあげた。 結局、正樹と青海は似たもの同士なのだ。 「…青海、」 「なんですか。」 再び無表情に戻った青海と向き合う。 「最初に晴人が逃げた原因、首輪の金具が壊れたからなんだ。」 「そうですか。はて、誰が壊したんでしょうね。」 誰かが壊したなんて言っていないのに、青海に隠す気は無いらしい。 まっ、良いけど。 青海が屈み、晴人につけていた首輪を手に取った。 「自由な様で仮想空間では檻の中ですか。差し詰め仮想監禁ってとこですかね。今度は失敗しないと良いですね。」 挑戦的に正樹を見つめたまま、青海は愛おしげに首輪にキスを落とす。 「失敗するわけないだろ。誰がどう邪魔してもな。」 「…そうですか。」

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