177 / 212
第177話
仕事で祈織が外に出ているタイミングで
俺も空き時間があったから祈織のクリスマスプレゼントを買いに向かった
とりあえずなんだっけ
Fire TVスティックだっけ
いや、Chromecastか
を調べてよくわかんねえけど
だいたいそういうテレビにつなぐ系は電気屋にあると思い銀座付近の電気屋に向かった
とりあえず店の人に聞いて
案内をしてもらい
いちばん良さそうなやつを選ぶも
本当にこんなちっさい箱でいいのか?と
買った後に不安になる
値段じゃねえ事はわかってるけど
これだけでいいのか?
確かに欲しがってはいたが
さっきはクリスマスに仕事を入れてしまって
祈織の機嫌を少し損ねた
今年のクリスマスは
祈織に任せる事になってしまったし
もう少し何かしらしてやりたい
せめて他にもプレゼント、と服屋に向かう
以前に私服用のコートをプレゼントしたら喜んでくれたよな、と
またコートを見るが
祈織が今のコートを気に入って今年も着てくれている事を知っているからいらないと言われる気もする
バッグ等の荷物も持たないし
手袋もそんなしないしな
つか何年か前に手袋やったら落として泣いて大変だった
もちろんすぐに新しいものを買ってやると言ったがまた落としたら嫌だからいらないと言われてしまった
そういえばそれで思い出したが一昨年寒そうだったから買ってやったマフラーは
去年、どっかの飲食店で祈織がトイレに行きたくなって急いで2人でトイレに行き荷物から少し目を離した隙に祈織マフラーのみが盗まれるという珍事件で無くしたな…
その時も祈織は相当落ち込んでいた
マフラーと手袋にするか、と祈織に似合いそうなものを探す事にした
つかまた無くしたら嫌だからと使ってくれなかったらどうするか
いや、そんな落としたり無くしたりはまぁある事だろ…
しょうがないというか
コートだって今は着ているし無くすことは滅多に無いと思うが
もう何年かしたら趣味や流行りなどが変わって着たくないと思うことだってあるだろうし
体型が変わって着れなくなるかもしれない
そんな身につけられて落とさなくてあいつが喜びそうな物なんて…
…首輪?と少し脳裏に過ぎったがすぐその考えは振りほどき
マフラーと手袋探しに集中する
何件か店を回ったところで
あいつに似合いそうな、
去年あげたコートとも合わせやすそうなシンプルなデザインのマフラーと手袋を見つけ購入し、
店を出たところで
はた、と正面の店が目に入る
いやいやいや、まさか、
柄じゃねえし
俺も祈織もそんなしねーし、
アクセサリーとか
…でも、首輪よりはだいぶ身につけやすいんじゃねえかな、
いやいやいや、なしだろ
さすがに引かれるだろ
ただの家主にそれは…
まぁ、見るだけ
どんなんがあるか見るだけ、と
とりあえずアクセサリーショップに足を踏み入れてしまった
◇◆
祈織へのプレゼントは
明日までは社長室の鍵付きの扉に隠しておく事にした
『あ、きょうへい戻ってきてたんだ』
と、ひょっこり社長室に顔を出した祈織は
送迎終わりのようで
なにやらもじもじと社長室に入ってくる
「おー、どうした?」
『きょうへい、あのさ、』
「うん、なに?」
なにやら言いたそうだな
おしっこでも漏らしたかな、と
祈織の下半身に視線を送るが濡れてないしスーツも着替えてない
『あのー、』
「どうしたんだよ、なんか言い難いこと?」
『いや。あの…仕事じゃない話していい?』
「いいけど」
『…クリスマス、じゃん?もうすぐ』
「うん」
いや。なんだ、どうした
プレゼント買いに行ったことバレたかな、と
鍵付きの扉をちらりと見てしまう
『プレゼント、』
と、言われ
さらにドキリとしたが
『何か欲しいもの、ない?』
と、次に言われた言葉は予想外のものでとりあえず安心する
「プレゼント?なに?祈織がくれるやつ?」
『うん、』
「ええ、なんだろ。別に俺はお前とケーキ食えればとくに、」
欲しいものはない、と言おうとしたが
祈織は最初の1年以外は毎回用意してくれる
最初のクリスマスは特になんもしなかったな
まだ祈織が家にきて数ヶ月だったし
俺も仕事を始めたばっかりで忙しい時期だった
チキンもケーキも食わなかった
いや、コンビニのもち食感ロールは食ったかも
欲しいものはないという言い方は悪いか、
というか、
「お前がくれるならなんでも嬉しいけど」
『ううううん、そうじゃなくてえ』
と、頭を抱えてしまう祈織
「いや。じゃあ、あれ欲しいな…えーと」
なんだ?
特に祈織に買って欲しいものとかはねえんだよなあ
というか普通に今欲しいものがない
祈織も物欲ねえけど俺もねえんだよなあ
物欲ねえけど
毎年祈織がくれるクリスマスプレゼントや誕生日プレゼントはめちゃくちゃ嬉しい
名前が入ったペンやキーケース
名刺入れも全部使ってるし
よくそんなところ見てるなってくらい
キーケースだって貰う前は金具が緩くなっていたのを惰性で使っていたら祈織は気付いていたらしく新しいものを選んでプレゼントしてくれた
「カレー、」
『カレーは誕生日じゃん、』
「そうだよなあ……あ、あれ欲しいな」
つか俺、
祈織がくれるってより祈織が俺のこと考えて選んでくれんのが嬉しいんだよなあ
『なに?』
と、今まで目を逸らしていた祈織がパッと顔をあげた
犬かよ。かわいいやつ
「祈織とお揃いのなんか」
『…おそろい?』
「いいだろ、たまには」
『おそろいの、なに?』
「それは祈織が考えて」
と、頭を撫でてやると
首を傾げた
もう少し悩ませることになるのは可哀想かもしれない
ただ、やっぱり祈織に
もう少し俺の為に悩んで欲しかった
…俺、本当に祈織の事になると大人気ねえというか余裕ねえな
ともだちにシェアしよう!