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世界背景/人物
【世界背景】
《伝承───人の世》
昔、一部の集落では、飢饉や干ばつは最寄の山や川、海などに宿る神の怒りだと思われていた。
とある村も例外ではなく、背後に聳える山には山神が居ると信じられ、毎年の如く生贄が差し出されていた。
しかし、徐々にその信仰も有耶無耶になり始め、人減らしに数人の子を山へ捨てる行事と変化を遂げる。
勿論、「生贄」とは名ばかり。
そんな中、一人の若い男が、山中の祠へ閉じ込められた子らを集め、町を開いた。
山を越えた先、人っ子一人立ち入らぬ場。
そこが、“七珍”と言う名の町である。
《伝承───妖の世》
とある村の背後の山には、確かに山神と言う女神が存在した。
しかし、人を寄越せなどと脅した覚えも無く、悪戯に人の世を荒らした覚えも無い。
そこで、山神はある年、山に居着いた一匹の妖狐に命じ、人の子らを集めた。
元々、花町にしたかった訳ではなかったのだが、人の子らだけを集めた町は、意外にも妖のたまり場となってしまう。
我先に我先にと、人の子らを扱いたいと申し出る。謂わば人身売買。
妖の下、子らがどうなったかは、誰も知るまい。
何時しか、町は妖達に生贄を囲う場、「贄殿(にへどの)」と呼ばれ始めた。
それにも、人が参入し始め、金子欲しさに花街へと姿を変えさせる。
妖怪はと言えば、人の子が手に入らぬ事を知り、何処かへ姿を消し、町に訪れる者の数は年々減っていった。
その代わり、人々が立ち寄る隠居の町となった。
幾許の年をたても、贄殿の文化と古風な風情が断たれぬは、山神の守護のお蔭だと今も尚、贄殿を見守る少数の妖怪達は考えているのであった。
【地名】
■七珍(贄殿裏)/しっちん、にへどのうら
神と妖が人の世に下り、生贄の子らを囲って作った町。今も尚、法に侵されず在り続ける。
作中、人が住み暮らす場を指す。
妖の里の後に作られた事から、裏と呼ばれる。
■贄殿表/にへどのおもて
妖のみの世界で、七珍と対になって存在する里。
七珍へ向かうに便利の良い。
しかし、七珍が人に侵された今、立ち寄る妖は皆無に等しい。
元より、此処で生まれた者、新たに生まれた者が集って暮らしている。
■表裏のお祠
七珍─贄殿裏を繋ぐ祠。
七珍に作られた祠に似せた祠を、贄殿裏にも作り、通りを作った。
が、人のみでは通りを潜る事は出来ない。
■七宝屋
青藤が以前いた、廊。
男女問わず春を売る者が在る。
■お巡り家
恩坩の住む家。
特に結界らしきものも張っていなかった為、妖が出入りするのも自由。
知らぬ間に沢山集まってしまったのだ、と恩坩は笑い、気には留めていない様だ。
【登場人物】
■青藤(あおふじ) (後の、御巡り家大藤守。通称青藤。)
歳は、二十二、三と見られる。
長年の花町での生活により、多少捻くれたところがあるが、基本的には温厚である。
己の生活が世の基準ではない事を知る身である為に、浮世的な事々にも動じない。
妖の世の一つ、「贄殿表」で起こる不可思議にも、勿論動じない。と言うよりは興味が無い。
郷に入っては郷に従え、だろう?と暢気なもの。
長く伸ばした黒髪に、白粉や紅を施した顔は女そのもの。
しかし、素顔を晒せば男とも女とも呼べぬ面。
男に抱かれつつも、男を抱く両刀だが、女を抱いた経験は片手で数え切れる程。
細身ではあるが、身長は決して低い方ではない。
■恩坩(めぐる) (巡─めぐり、と呼称する者もあり。)
一見、歳は青藤より二、三の違いがある程度だと見える。実の所、齢千年、二千年、はたまた三千年と言われる程の大妖怪。
本来、九尾を持つ狐なのだが、青藤が「贄殿表」にやって来た際の、尾の数は七尾。
唯の狐だった時代には、名は無かったし、妖狐となった後も名は無かった。
山神に命じられ子を集め始めた辺りから、数多の妖怪から「お巡り」と呼ばれ出す。
由来は、山を巡り子を集める事から。
そこに「様々な恩(子を妖に引き渡す事に対する妖からの恩など)を所持する」と言った意味合いで、ある日、嫌味交じりに己で恩坩と名乗り始めた。
光の加減によっては、紺とも金とも白とも言えぬ髪色。曰く、妖力の所為だとか。
解けば床を引く長さを、妖力を均整に留める紐を使い一纏めに括り上げ、常時適度な長さに留める。
人型になれば、身丈は青藤と然程変わりない。
狐の形になると、狐よりも一回りも二回りも大きく変化する。
その時々によって大きさは変えるのだと言う。
九尾ある筈の尾は、左右端二本分足りず、尾があった形跡だけを残している。
■狐坊
普段は、「贄殿表」の山に住み着いている子狐妖怪。
七珍(贄殿裏)から青藤がやって来るとの話を受け、恩坩に命じられ、青藤の世話を焼く。
青藤にしてみれば、妹分達の様で、可愛らしいと言う。
■双葉(ふたば)
お巡り家に居付いた双子の童子。残り百年程で屋敷の座敷童子になれるのだと言う。
■お佐代(さよ)
夜な夜な障子に影を落とし、青藤と会話を楽しむ。
■鳴家(やなり)達
長年、恩坩が住み着いた故に、屋敷内どこそこに見受けられる小人。
■珠綺(たまき)/【二の夜】以降登場
恩坩を好いている猫又姉妹の姉方
元は吉原の花魁が可愛がっていた
琥珀の様に綺麗な玉模様がある三毛
■茶縞(ちゃしま)/【二の夜】以降登場
珠綺の妹方、姉の恋路を応援する身
珠綺と同じく花魁に飼われていた猫
名の通り、茶色の縞がある
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