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Proof.3
その後の食事会は、予想外に和やかモードになった。
ゴリカマ特製の料理を食べながら、ゴリカマと由良は軽快に会話を弾ませ、来人は言葉少なではあったが、あっという間に時間は過ぎた。
ゴリカマの強烈さに破局の可能性も考えていたので、そうならずにホッとしている。
食後のコーヒーを出され、ゴリカマが再び椅子に戻ると、由良が真剣な顔で切り出した。
「お話しがあります。」
番の話だ。
ピリッと空気が貼りつめ、来人は珍しく緊張したのだ―――が、
「マーガレットさん。」
由良の開口1番の言葉に、来人は脱力した。
一応、お付き合いのご挨拶をしている状況なのに、もうコントにしか見えない。
マーガレットとは、ゴリカマの源氏名だ。
本名は江ノ島竜之介という男らしい名を持っているの筈なのだが、使われた所を来人は1度も見た事はない。
「今日は来人くんとの関係を認めて頂きたく、お話しをしたくて来ました。この場を設けてくださり、ありがとうございます。」
「孝幸くん、本当にしっかりしてるのねぇ。なんで来人なんか。」
ゴリカマ―――竜之介から哀れっぽい視線を注がれ、内心で同意しつつも、来人はギロッと睨みつけた。二人の視線が戻ると、由良がピンと背筋を正し再び話を再開する。
「ボクは高校を卒業した後、都内の大学へ進学しますし、来人くんは専門へ行かれると聞いています。まだしばらくお互いに学生の身分なので、マーガレットさんからすればさぞ心配だとは、」
「まってまって、孝幸くん。」
真剣な顔で話をし出した由良を、竜之介が苦笑いしながら制した。
「そういう話も大事だけど、来人と孝幸くんの事が聞きたいわ。その内、話すべきだとは思うけど、今日は来人をどう思ってくれてるのかを、アタシは知りたいの。」
竜之介の良くわからない問いかけに、由良が少し考えるような素振りを見せる。
余計な事を―――と、来人は苦虫を噛み締めた。さすがに蔑まれるとは思っていないが、実際にどう思われているのか、未だに自信がない。
嫌な風に心拍数が上がり、来人の手にじわりと汗が滲んでくる。
「来人くんは、とても可愛らしい方です。言葉は乱暴な時もありますが、心の内は柔らかで繊細で、瞳はとても真摯です。本人には何故か中々伝わらないのですが、ボクには愛らしくて仕方ありません。まだ出会ったばかりなので、お互いの事を理解しているとは言えませんが、来人くんと『運命』になれて、ボクはとても嬉しいです。卒業後に番となり、迷いながらも一緒に将来を、どこまでも歩んでいきたいと思っています。」
由良の声を聞きながら、来人はうつ向いた。今、顔を見られる訳にはいかない。
―――ヤバイ、泣く。
これはもうプロポーズではないか。
目頭が熱い。
ジワジワと視界が潤む。
来人が爆発しそうな感情を必死に堪えていると、斜め前からグズグスと鼻をすする音がしてきた。
来人が顔を上げると、竜之介が顔をグチャグチャにして泣いていた。元から酷いのに、もう見れたモノじゃない。
「うう、らいど~、よがっだわぁねぇ、あんだ
あいざれでるじゃないのぉ~、」
竜之介があまりにみっともなくて、不細工で、憐れで。―--でも、どうしようもなく幸せに思えて、来人は堪えきれず涙を溢してしまったのだった。
一生の不覚である。
End.
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