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Proof.2

自宅の玄関のドアを握りしめ、来人は深刻な顔をしながら後ろを振り返った。 「いいか、とんでもねえバケモンが出てくるからな。わかったか?」 「バケモノ?イグアナでも飼っているのですか?」 由良からズレた言葉が返ってきて、一気に脱力する。 入学当時からテストで1番を譲らないほど頭がいい癖に、現実にはボケボケし過ぎだろう。 失言の多い来人は、それに助けられる事もあるから強く直しても欲しくないが、ちょっと心配だ。詐欺にでも引っ掛かってそうで。 「ちげえよ、親だ。親がバケモン。いくぞ。」 ガチャ―――と、勢いよくドアを開けたまでは良かったが、玄関先にバケモノである来人の親が、デデンッと待ち構えており、来人は早くも後悔した。 「いらっしゃ~い!」 裏声を使ってバケモノのオカマ―――来人の親が出迎える。その顔は丁寧に化粧が施されてはいるが、元が元なのでカバーできていない。わが親ながら、毎日見ていても悲惨だ。 ゴリラが化粧をしても人間に見えないように、ゴリラ顔の男がいくら頑張ろうと女になれるはずもない。 そのゴリオカマは喜色満面で、由良を一目見た途端に、裏声をワントーン上げる。 「ちょっとぉ、凄いイケメンじゃないのぉ!顔面レベル高過ぎるぅ!」 「このクソヤロウ!それ以上、由良に近寄んじゃねえ!」 今にも飛び付かんとするゴリカマ(親)を、来人は蹴りつけた。が、このゴリカマ意外と素早いし、腕っぷしも強く、あっさりと来人の足は避けられる。かすりもしない。 チッ―――っと、来人が舌打ちすると、ゴリカマは大袈裟にしなをつくる。 「ああん!ひどい子ねえ。それにヤロウじゃないって何度も言ってるでしょ。」 「由良、このバケモンがオレの親。」 ゴリカマを指差して紹介すると、由良が爽やかに微笑み頭を下げる。 右と左の景色の違いがすごい。 右はオアシス、左は砂漠。 「はじめまして、由良孝幸と言います。お母さま、この度は押し掛けてしまってすみません。きちんと挨拶をしておきたくて。」 「まぁぁ、お母さまですって!なんていい子なのぉっ!さ、上がって上がって。ゆっくりお話ししましょうね!」 「はい、お邪魔します。」 ゴリカマとの強烈な対面に動揺していないのか、由良は常と変わらない。 ―――由良、こいつマジすげぇな。

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