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強く 抱きしめて 2

そしてボクは、大学卒業後に料理の専門学校に入学する。 ボクはボクで、学費は両親には頼らずに、ウリで貯め込んでいたお金を使うことにした。 今までかかった養育費を両親に叩きつけるために貯めたお金を、剛さんと一緒に生きるために、やりたいことを実現するために使うことにした。 2年間通って調理師免許の取れる学校を選んで、きちんと勉強しようと思う。 自己流じゃなくて、剛さんにちゃんと美味しいご飯食べてもらいたいし、いつかは飲食店で働いて、ボクの作ったご飯をお客様に食べてもらいたい。 こんな風に将来のことを考えることができるなんて、思ってもいなかった。 全部、全部、剛さんのおかげ。剛さんが変えてくれた。 今日も今日とて、剛さんの帰りを待ちながら夕ご飯を作る。 今日は大寒波が到来していて、しんしんと冷えて雪が降りそうな寒さなので、体の芯から温まるようにお鍋にした。 剛さんがいっぱい食べてくれるので、二人分にしては大きめの土鍋に、白菜とかきのことか豆腐とかたっぷり使って、メインは鶏のもも肉とつくねにした。 きちんと出汁(だし)を取って、火が通りにくい白菜の芯だけ入れておいて、剛さんが帰ってくるのを待つ。 エアコンの暖房もつけて部屋を暖めている。寒い中帰ってきた時に、部屋が寒いのは侘(わび)しいから。 こんな風に誰かが帰ってくるのを待つのが楽しいなんて、知らなかった。 今までは一人だった。 小さい時から、家に帰っても家政婦さんがいるだけで、家はとても寒くて淋しい場所だと思っていた。 今は違う。 今は帰ってきた時は一人でも、毎日剛さんが帰ってきてくれて、一緒に過ごすことができる、大切な場所になっていた。 帰って来ない人を待ち続ける、淋しい場所ではなくなった。 だから、こうして帰りを待つことが、嫌いじゃなくなった。 時刻はもうすぐ19時になろうとしている。いつもだったらもうすぐ帰ってくる時間。 数十分前に『今から帰る』と剛さんからLINEがきたから、もうすぐ着くはず。 ダイニングテーブルにカセットコンロを設置して、その上に土鍋を置いてトロ火で火をつける。取り皿やお箸をセッティングしていると、玄関のチャイムが鳴った。 帰ってきた!! 嬉しくてリビングを走って廊下に出て、そのまま玄関へ走る。 玄関のドアが開いて、がっしりした逞(たくま)しい体を黒いダウンコートに身を包んだ、とても背の高い剛さんが姿を現した。

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