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強く 抱きしめて 16

ガチャリと音を立てて、白くて四角い会議室のドアが開き、お父さんが現れた。 オーダーメイドのグレーのダブルのスーツを着て、白いYシャツに赤いネクタイをして、胸ポケットにも赤系のハンカチを刺している。 剛さんに近いくらい身長が高く、運動で鍛えている体はたくましく、筋肉質だ。 こうして見ると、剛さんとお父さんって、ちょっと似てるのかも。 お父さんは皮靴の音を響かせて会議室に入ってくると、ボクの正面の椅子に座って、深く腰掛けて足を組むと、正面からボク達を見た。 「時間がない。用件を言え」 高圧的な態度と、人を制圧できる深くて低い声。 他者をひれ伏す圧迫感を持った、一重の鋭い眼光に射竦(いすく)められて、ボクはうまく声が出せなくなる。 いつも、いつもこうだ・・・お父さんがこうやって上からくるから、ボクは恐くて何も言えなくなってしまう・・・。 体型とかは似ているのに、こういうところは剛さんとは正反対。 今日こそはちゃんと正面から向き合おうと思っていたのに、その勇気がしぼんでいくのがわかった。 俯(うつむ)いて、声が出せずにいるボクを見て、剛さんがまた代わりに説明をしてくれた。 お母さんに話したことを、お父さんにも話してくれた。 最初はボク達を少し馬鹿にするような笑みを浮かべて見ていたお父さんが、親子鑑定と聞いた途端に眉根を寄せた。 「できれば、ご協力いただきたいと思っております」 「馬鹿な・・・そんなこと・・・!」 「そうでしょうか?千都星がお二人の子供だと証明されても、されなくても、色々と気持ちの整理がつくのではないですか?」 「だからって・・・」 「千景さんは、了承して下さいました」 「な・・・?!」 今まで見てきた中で、一番驚いた顔をお父さんが見せた。 冷静沈着な態度はなりを潜めて、傲慢(ごうまん)な振る舞いは微塵(みじん)も感じさせず、切れ長の目を大きく見開いて、微(かす)かに口唇を震わせながら、浅い呼吸を繰り返す。 「そんな・・・ばかな・・・」 お父さんが上半身を屈(かが)めて、口元に手を当てて顔を伏せて、動揺を押し隠そうと、全身で呼吸を繰り返している。 仕立ての良いスーツがシワになりそうなくらい、お父さんはしばらくその態勢で動かなかった。 お父さんにとって、お母さんが親子鑑定を了承したことが、それほど意外なことだったみたい。 そんなお父さんの様子を見て、剛さんは畳み掛けるように言葉を紡(つむ)いだ。あくまでも冷静に、淡々と告げる。

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