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「着替えたよ」
俺が声をかけると友紀は振り返り、真顔でマジマジと見つめてきた。
「やっぱり……可愛いな……」
「めちゃくちゃ、女子が好きそうな可愛いワンピだよな」
「あっ……あぁ、そうだな……ワンピ可愛いな」
「ウィッグはどれにする?」
「ウィッグなしでも、十分良いけど……」
「変装なんだから、いつもと雰囲気変えないとマズイだろ」
「そ、そうだよな……悪ぃ……このワンピなら、ゆるふわなウェーブのが合うんじゃないか?」
「確かにこれ合いそうだし、いつもとイメージか変わるかもな」
友紀が選んだスモーキーアッシュの髪色の、ゆるふわなウィッグを被った。
「うん…すごく……いい…………このヘアクリップもつけてみて。ウィッグの固定も出来るし、組み合わせとしてはありだぜ」
薦められたフリルとパールの付いた、白いリボンのヘアクリップをウィッグに付けた。
「友紀、カラコンいるかな?この服とウィッグなら裸眼でもバレなさそうだけど……なぁ、話聞いてる?」
「あっ…悪ぃ……少しボーっとしてた。裸眼でも十分可愛いな」
「いや、可愛いとかじゃなくて……変装として、どうか知りたいんだけど」
「私服だとかなりイメージ変わるから、裸眼でも柚希ってわからないと思うよ……」
他にも明日組み合わせるバッグや靴や靴下を、あれこれと迷いながら、どれにするか二人で決めた。
「じゃあ、まずは正面から撮ってくから」
どんな服装か分かりやすいように、正面、横、後ろ姿と、特徴のある服の飾りや小物類はアップで撮影した。
送る画像を選ぶのに、ベッドに腰掛け並んで座った。写真を撮った友紀のスマホで、どの画像にするか考えていた。
「画像これとこれが、いいんじゃねぇか?服装わかりやすいし」
「あ……うん、そうだな……どれも…可愛い……」
「なぁ……友紀さっきから、全然話聞いてねぇし、変なんだけど」
「ごめん、柚希!」
「なっ……!」
友紀がいきなり抱きついてきて、その勢いでベッドに倒れ込む。密着した身体から、友紀の股間が硬くなってるのがわかった。
陽人に『柚希は隙が多すぎる』って、口うるさく言われた言葉を思い出す。
藻掻いて押し退けたくても、体格差でとてもじゃないけど敵わない。
「ごめん……絶対、何もしねぇから……少しの間でいい……このままでいさせて……頼む……」
震えた声で苦しそうに、友紀が懇願した。
男だからわかるけど、友紀がすごく我慢してるのがわかった。
暫くすると、きつく抱きしめていた腕の力が緩んだ。友紀はヒョイっと起き上がると、ベッドの端に腰を掛け小さく項垂れていた。
「悪かった……俺、童貞だから……女の格好した柚希見てたら、ムラムラしちゃって……深い意味はないから……嫌な事して、本当にごめん……この事、征爾に言って制裁は受けるから……ごめん……」
強面の友紀が今にも泣き出しそうな、すごく不安な顔をして俯きながら、大きな体に似合わないか細い声で、絞り出すようにして言った。
「驚いたけど……変な事した訳じゃねぇし……制裁とか、しなくていいから。明日、護衛よろしくな」
「ごめん……明日、迎えに来るから……このまま俺、帰るな……じゃあ、明日……」
立ち上がった友紀は、わたわたと逃げるように帰って行った。
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