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クーラーの効いた部屋で涼みながら、洗い立ての髪をドライヤーで乾かしてた。
細い髪をかき上げながら温風を当て、ぼんやりと友紀との出来事を考えた。
ーー何回も謝ってて……友紀辛そうだった……
中学生で常にムラムラしてるから、ミニスカの格好を見て襲いたくなるのはわかるけど……
必死に理性で押さえ付けてる、友紀の苦しそうな顔が忘れられなかった。
生徒会のグループトークに、友紀からメッセージと撮影した画像が送られてきた。どんな服装かわかりやすい写真を、ちゃんと選んでくれていた。
みんなから『可愛い』って一斉にメッセージが送られてきて、死ぬほど恥ずかしかった。特に絢斗は大騒ぎしていて、心底ウザかった。
メッセージのやり取りが続く中、電話が鳴り着信画面へと切り替わった。
「陽人、どうしたの?」
『柚希の画像がすごく可愛くて……ずっと見てたら声が聞きたくなった』
「可愛くねぇし……」
『あのさ、少し気になったんだけど……友紀がこの画像、なんで持ってるの?』
「え……?写真撮ってもらったから」
『二人きりで?』
「そうだけど」
『目の前で着替えたの?』
「そうだよ」
『……何もされなかった?』
ベッドで抱きつかれた事を思いだし、すぐに答えられなかった。
「……何もねぇよ」
『そっか……それなら、いいけど。柚希が明日、こんなに可愛い格好で応援してくれるって思うと、すごく嬉しくて』
「陽人が喜んでくれるなら……俺も嬉しい」
『今日、病院でギプスを外してきたんだ。明日、無理しない程度なら試合に出て良いって。最後だから、柚希に見ていてほしい』
「マジかよ!応援する。ベンチにいる陽人も、試合に出てる陽人も……ずっと、陽人だけ見てるから」
『ヤバい……柚希に逢いたくなっちゃった……』
「俺も……陽人に逢いたい。逢いたいけど……試合、頑張ってほしいから……だから、我慢する」
『そうだね……俺も我慢するよ。試合終わったら、逢おうね』
「うん」
『好きだよ、柚希……』
「俺も……好き……」
『……あー、すごく逢いたい。逢って抱きしめたい。ギプス取れてやっと両手で柚希の事、ギュッて出来るのに……』
「明日、優勝したらギュッてしてよ」
『必ず、優勝するよ。試合終わったら、すぐに柚希の元へ駆けつけるから』
「んっ。楽しみにしてる」
「また、明日」ってお互いに言って、明日を待ちわびながら電話を切った。
ベッドに横たわったものの、明日が楽しみで昂って眠れない。
遠足や運動会の前日の夜は、いつも興奮して眠れなかった。
ーー本当は陽人、緊張してるんだろうな……眠れるのかな……
万全な体じゃないのに、いきなり決勝戦へ出場って、嬉しい反面すごいプレッシャーだと思う。
でも陽人は今まで、周りからの様々な重圧や期待を、裏切ることなくこなして成功させてきた。
だから、きっと明日も大丈夫だ。
それに、前向きだし物怖じしない性格だから、案外大丈夫か。
ーーそういや陽人って、すげー寝付きも良いもんな。俺の方が、気になって眠れないかも……
二人で寝転んだ時も、陽人はすぐに寝ちゃって、俺はなかなか眠れなくて。
先に眠る綺麗な寝顔を、いつも見つめてた。
眺めているうちに気持ちが穏やかになって、いつの間にか俺も眠りについていたんだっけ。
陽人の寝顔を思い出してたら、だんだん眠気が襲ってきて、意識が遠退いてきた。
陽人と付き合うようになってから、怖い夢やフラッシュバックをする事は少なくなっていた。
せめて今から見る夢だけは、最後の試合で陽人がゴールを決めて、優勝する姿が見たい。
それが正夢で、現実になって……
太陽みたいに輝く笑顔で、両手でギュッて抱きしめられたい……
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