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ーーーー決勝戦・あおばスタジアムーーーー 「悪ぃ……トイレ行ってくる……」 「友紀、顔色すげー悪いけど、大丈夫か?」 「あぁ……トイレ行けば、大丈夫だから……すぐ戻る……」 プラスチックの無機質な座席から、友紀は慌ただしく立ち上がると、半ば駆けるように急ぎ足でトイレへ向かって行った。 迎えに来た時から顔色が悪くて、昨日の事気にしてるのかなって思ってたけど…… 勿論それもあるんだろうけど、友紀は体調がすごく悪かった。 試合会場のあおばスタジアムまで二人でバスに乗って来たけど、車中でも苦しそうで脂汗をかいて少し震えていた。会場へ着いた途端、トイレに駆け込み、座席についてからも何往復もトイレへ行っていた。 あまりに辛そうだから、「帰って休んでなよ」って言ったけど、護衛するんだって言い張り、頑なに聞いてくれなかった。 観客席は陽人カラーで一色だった。 東中の生徒は勿論、他校の子も、高校生も、私服を着た大人の人も…… みんな陽人のイメージカラーの、赤色の小物を身に付けていた。親衛隊の人達は、彩ちゃんと莉奈ちゃんが作った陽人くんバンダナをつけていた。 口々に陽人の名前を言ってるのが、あちらこちらから聞こえてきて、陽人の話題が途切れる事が全然なかった。 ーー陽人が人気あるのは知ってたけど……ここまですごいっていうのは……知らなかった…… 自分の恋人のあまりの人気ぶりに、少し唖然とした。 陽人が遠い世界の人のように思えて…… 俺なんかが陽人の恋人でいいのかなって、不安な気持ちになった。 「陽人の人気、すげぇな……まるで、アイドルみてぇ」 戻って来た友紀が、隣の座席へどっかりと腰を下ろした。 「友紀……大丈夫なのか?無理するなよ……」 「昨日食い過ぎたせいだから、平気だって。どうした?元気ないぜ」 「陽人って人気あるんだなって……」 「でも、その陽人が選んだのは、柚希だろ?」 「…………知ってたのかよ?」 「見てればわかるよ……ずっと、見てたから……柚希にベタ惚れじゃん、陽人。だから、自信持てよ」 「なんか、元気出た…ありがとう」 友紀に励まされ、失いかけた自信を少し取り戻せた気がした。 試合開始まで、まだ時間があった。 さっきよりも更に真っ青になった友紀は、立ち上がると「悪ぃ…」と言って、再びトイレへ向かった。 今度はなかなか戻って来ない。 友紀の顔色がすごく悪かったから、倒れたりしてないか心配だ。 何回か友紀にメッセージと電話をしたけれど、全く連絡がつかなかった。

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