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82 ~柚希 side~ 【第二章】
「食べられるか?」
優しく甘い口調で、散蓮華で掬ったお粥を俺の口元まで運ぶ。
口を開け、介助を受け入れる。
懐かしい味……
空っぽのお腹の中心から、じんわりと温まる。
「美空に教わったんだ。柚希は具合が悪い時は、このたまご粥しか食べないって。初めて飯、作ったから……味、変じゃねぇか?」
「おいしい……」
そのまま、柊が二口目を運んでくる。
「ごめん……もう……」
「やっと、飯食えるようになったからな。無理すんなよ」
そう言って優しく頭を撫でると、薄い上半身を抱きしめるようにして支え、ゆっくりとベッドへ横たわらせる。
「どうしても出掛けなきゃならないから、繋いでいくぜ。電話にはすぐ出ろよ」
赤い首輪に鎖を繋いで、片耳にマイク付きのワイヤレスイヤホンを付けられる。
出掛ける前のいつもの準備を終えると、フェザーケットを優しく掛けてくれた。
「愛してるよ、柚希」
乾いた唇に、薄くて熱を帯びた唇が重なる。そのまま、柊は長い舌を絡め、暫くの間貪り続けた。
「愛してる……柊……」
俺の言葉を聞くと満足したように目を細め、柊は部屋を出ていった。
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