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第14話

マーチンが行方不明になった。悪魔界はざわつき、僕は怖くなった。マーチンは人間の恋路を邪魔するのを得意にしていた。もしかしてどこかで恨みをかってしまったのだろうか・・・それとも。  マーチンは、いつも僕をいじめてきた。酷いことばかりされてきた。酷いことばかり言われてきた。でも、いきなり行方不明になってお別れする日がくるとは思わなかった。 「マーチンのことだ、どうせまたひょっこり現れて僕をいじめてくるだろう」  そう思っていたけど、いつまで経ってもマーチンは現れなかった。 「どうしたのですか?ルーク」 「え・・・えっと、実は前に話したここに行き来していることがバレてしまった悪魔が行方不明になってしまって」 「それで、ルークはどう思いましたか?」  ヴィスタ様は、少し神妙な表情で僕に問いかけた。僕は少し考えて、 「彼は僕のことをよくいじめましたが、僕は彼のことをいなくなってしまえなんて思ったことはありませんでした。でも、もしかしたら心の奥底で、自分でも気が付かないうちにそういうことを考えていて、それが神様に届いて彼が行方不明になってしまったんだとしたら、僕はとても申し訳ないなと思います」  僕は素直に答えた。 「ルーク」  ヴィスタ様は、僕の手をとって僕の目を見つめた。 「大丈夫ですよ、ルークのせいではきっとありません。考えすぎですよ。悪魔は恨みを買いやすいですからね」  ヴィスタ様は、そういって僕を励ましてくれた。 「それより、ルーク」  ヴィスタ様は、僕の手をとった。握っている手の力がいつもより少し強く感じた。 「・・・?」 「一人での穢れの放出は上手くできるようになりましたか?」  ヴィスタ様は、僕の耳元で囁いた。 「ぁ・・・は、はい」 「そうですか、素晴らしい。今日はそれを見せてもらいましょうかね」  ヴィスタ様は、僕の頬を撫でながら微笑んだ。 「みせて・・・って」  僕はかあっと顔が熱くなるのを感じた。 「いいですよね?教えた通りちゃんとできているかの確認です」 「・・・また、ここでやるんですか?」 「いえ」  ヴィスタ様は、僕の手を引いた。 「今日はお清めの部屋でやりましょうか」 「え!?」  久しぶりで僕は驚いた。でも、行方不明になったマーチンが見ているかもしれない。僕は、不安になって教会の入口を見た。 「で、でも」 「もし、ルークが教会へ通っていることを周りに言いふらすといった悪魔が私たちを見ているとしたら、必ず今日あなたの元に「見ていたぞ」と現れるはずでしょう?」 「あっ・・・!」 「そうです、ですから行方不明の彼が見つかることになっていいじゃないですか」  ヴィスタ様は、そういって僕の肩に手を添えた。 「大丈夫ですよ、私たちがお清めの部屋にいっていない期間は間がありましたが、行方不明ではなかったでしょう?私たちには関係ないところで何かあったんですよ」 「・・・そうですね」  ヴィスタ様はそういって優しく僕を励ましてくれた。僕は、少しして小さく頷いた。 「励ましてくれてありがとうございます」  ヴィスタ様は、僕がそういうと少し悲しそうな顔をした。 「そんなに、その悪魔が心配なんですか?」  ヴィスタ様は、眉を八の字にして不安げな表情で僕に聞いた。 「あっ・・・いえ、そういうわけでは」 「・・・ルークは優しいですからね。いじめられた相手のことも考えてしまうんですね」  ヴィスタ様は、僕の頭を優しく撫でてくれた。 「・・・いえ、そんな」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「ヴィスタ様?」 「・・・いいえ、何でもありません。行きましょうか」  ヴィスタ様は、僕の手を力強くとって僕たちは久々にお清めの部屋に向かった。 「ルーク、では服を全部脱いでください」 「あ、あの、穢れの放出だけでは」  ヴィスタ様は、笑顔で答えた。 「今回はちゃんと一人で穢れの放出ができるかのテストですので、全部見せてください」

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