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第13話

「あるところに、絶対無敵のエクソシストがいました。エクソシストは、人々を救い、悪魔を滅してきました。人々には感謝され、エクソシストは毎日悪魔祓いを続けてきましたが、一向に悪魔は減る気配がありません。悪魔はエクソシストをあざ笑うかのように、悪さを繰り返すのでした。そして、とうとう悪魔は、何匹かで結託し、エクソシストの出かけている隙に、エクソシストの住んでいた教会にいた人々を全員食べてしまいます。悪魔は、孤児のエクソシストが父親のように慕っていた最愛の神父に憑りつき、その姿で、神父の家族共々食い散らかしたのです。エクソシストは、怒りに震え悪魔に出会ったら手足り次第に惨滅していきました。エクソシストの心は、悪魔に対しての怒り、憎しみで真っ黒に染まり、エクソシストの心を壊していきました。そして、壊れたエクソシストはとうとう悪魔に憑りつかれた人間も、悪魔共々焼き殺してしまったのです。悪魔に憑りつかれた人間を見ていると、エクソシストは悪魔に憑りつかれた人間を食べている神父様に見えてきて、悪魔と人間の区別がつかなくなってきました。エクソシストは、救ってきた人間にも、悪魔に憑りつかれると言われるようになりました。エクソシストは、人間たちに町から追放されてしまいました。エクソシストは、一人ぼっちになりました。そして、一人寂しく、町から外れた森の中、静かに教会で暮らしたのでした」  ヴィスタは、森で怪我をした烏を見つけました。邪気がなさ過ぎて、ヴィスタでさえ、その烏が悪魔だと気づきませんでした。ヴィスタは、その烏にとあるエクソシストのお話を聞かせました。烏はそれを聞いて涙をぽろぽろ流しました。  心が壊れてから、涙さえ出なかったヴィスタは、どうしようもなく烏のことが愛おしくなりました。  でも、自分のような人間の元にいても烏は幸せになれないだろう、そう思って手放した烏が人間の姿で現れました。しかも、悪魔だといいます。ヴィスタは、襲ってきたらいつでも殺せるようにと警戒していましたが、その悪魔はあろうことか、自分に滅されたいと泣きついてきます。しかも、自分を憧れの存在だとも。ヴィスタは、あの時の烏と同じ綺麗な涙を流し、自分に膝まずいてくる悪魔に、凍っていた心を動かされました。 「いつでも教会に来なさい」  その時、その悪魔は本当に嬉しそうに微笑み、涙を流しました。しばらく時がたち、ヴィスタは、聞きました。 「前にエクソシストのお話をした時、どうして涙を流したのですか?」  悪魔、ルークは答えました。 「皆の為に一生懸命悪魔を滅してきたエクソシスト様が最後には一人ぼっちになってしまったからです。僕は、それが悲しくて、涙を流しました」  悪魔ルークの答えに、ヴィスタは目を大きく見開きました。 「もし、そのエクソシストが私だったらどうですか?」 「え?」  ヴィスタは、俯いたままルークに表情を見せずに問いかけました。 「もしも、の話です。このお話は逸話ですので」 「そうですか」  ルークは、ヴィスタの手をとって微笑んだ。 「ずっと一緒にいます!正義の味方が一人ぼっちにならないように。僕は元々悪魔ですから、悪魔に憑りつかれることはないですし、そうじゃなくても、僕はヴィスタ様と、ずっと一緒にいたいです」 「・・・・・・・・・・」  ヴィスタは、体を震わせ涙を流しているのがバレないように後ろを向いて立ち上がった。  そして、ルークを見て微笑んだ。 「ルークは、優しい子ですねえ」

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