2 / 18
第2話 出会い2
701号室、和久井ロイというプレートがかかった個室の扉をノックしてから、中へと入る。
付き添いなのであろう男性と談笑していた少年がこちらを見た。
その少年に微笑みかける。
「和久井ロイくんだね? 初めまして。君の担当医の北見です」
ロイは一瞬ポカンと口を開け、俺を凝視したあと慌てたように挨拶を返してきた。
「あ、よ、よろしくお願いします」
ぺこりという擬音がついてそうなお時期をする。
とても綺麗な子だった。
透き通るような白い肌。大きな瞳と小さな顔。触り心地がよさそうな艶やかな茶色みがかった髪。
背中に翼をつけたらそのまま天使になりそうだ。
俺にそっちの気はないが、ここまで綺麗な少年となれば見惚れずにはいられない。
少年を見つめていると、付き添いの男性――俺と同年代の爽やかな体育系のイケメン――が、深々とお辞儀をしてきた。
「先生、よろしくお願いします」
声をかけられて夢見心地から覚め、男性に問いかける。
「こちらこそ。えーと……お兄さんですか?」
そう問いかけたものの、ロイと男性はまったく似ていない。
俺の質問に答えたのは、ロイの方だった。
「あ、違います。お父さんの会社の人です。お父さんとお母さんは夜にならないと来れないから、それまで僕のお守りを頼まれてるんです、格造(かくぞう)さんは」
「ああ……そうなんだ」
「格造さんって、会社では超エリートなのに僕にはすっごい過保護で、ちょっと困るくらい。僕ももうすぐ二十歳になるのに」
そう言って拗ねたように口をとがらす顔はとても幼く、もうすぐ二十歳になるようには見えない。
一見、人見知りしそうな雰囲気をまとっているが、どうやらロイは人懐っこい性格のようだ。
「明日から少し検査が続くんで、今日はゆっくり休んでおいてね、和久井くん」
「あ、ロイでいいです」
「……じゃ、ロイくん」
「はい! 北見先生」
元気よくうなずくロイ。
その笑顔は無邪気で屈託がなく、俺の心をふんわりと暖めてくれたが、同時にあと一年で消え去ってしまうものかもしれないと思うと、どうしようもない焦燥感にも駆られたのだった。
ともだちにシェアしよう!