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第5話 初めての恋のよう

「それじゃちょっと胸の音聞かせてもらっていいかな」  聴診器をロイの真っ白な肌に当てる。  ロイが自分のことを好きだということを立ち聞きしてしまってから一週間が経っていた。  医師という仕事柄もあり感情を隠すのは得意なので、ロイにはなにも悟られてはいないが、俺はロイと接するとき、緊張してしまうようになっていた。  今の病気を告知されるまでは、彼女が途切れたことがなかったというのに。  ロイが相手だとどうしてこんなに緊張し、胸の鼓動が早くなってしまうのか。  ……なんだか初めての恋をしているみたいな……。   「北見先生、どうかした?」  ロイに声をかけられてハッと我に返る。 「いや。なんでもない。……それより気分はどう?」 「うん……なんかね、北見先生に診て貰いだしてからすごく調子がいいんだ。貧血を起こすこともなくなったし、ご飯も前よりおいしいし」 「そう。それはよかった」  今のところロイもそして俺も大きな発作を起こさずに済んでいる。  同じ病を抱える二人。  マイナスとマイナスが掛け合わされてプラスに転じたかのように穏やかな日々が続いていた。  しかし、それは束の間の穏やかさだったようで。  冬の雨が激しく振りしきる日の深夜、ロイは発作を起こした。

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