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第18話 熱情
腕の中で小さく震える体を抱きしめ、抱き上げると、奥にある寝室の扉を開け、ゆっくりとベッドの上へ降ろした。
「北見先生……」
ロイの涙が残る柔らかな頬へキスを落とす。
「ロイ、君が好きだよ」
「……先生……?」
「好きだ……」
「せんせっ……ん……」
ロイの唇に自分のそれをそっと重ねる。
ロイが小さく身じろぎ、俺の体を押し返して来た。
「先生……、同情なんて、僕はいらないからっ……」
俺はロイの抵抗を封じ込め、もう一度キスをしてから、耳元へと囁いた。
「俺は君が好きなんだ」
「嘘だ。先生は僕の気持ちを知ってて……ただ同情してくれてるだけ――」
「同情なんかで、男の子にキスなんてできない。好きだから、キスしたいし、抱きしめたい。信じて」
「北見せんせ……んっ……」
みたび唇を合わせる。
こんどは先程の二回よりも強く唇をロイのそれに押し付けた。
大好きな人の柔らかな唇は、俺からどんどん理性を奪っていく。
それでもこれ以上の行為に及ぶ気持ちはなかった。
角度を変え、何度も何度もロイの唇へと口づけを重ねたあと、ロイを自分の腕の中に抱きしめる。
ロイの柔らかな髪をそっと撫でることを繰り返していると、腕の中の存在がおずおずとその細い腕を俺の背中に回してきた。
「……北見、先生……、信じていいの……?」
吐息のような小さな問いかけ。
「ああ。信じて……」
「先生……」
ロイは何度かの逡巡のあと、答えをくれた。
「僕も、北見先生が……好き……」
「ロイ……」
以前に偶然という形でロイの気持ちを聞いて知っていたが、やはり直接告白されると来るものがある。
それにロイは俺の背中に回した手に力を込め、ギュッとすがりついてくるのだ。
こんなことをされると、何だか誘われているような気持ちになってしまって、俺は必死に欲望と戦いながら言葉を紡いだ。
「だめだよ、ロイ。そんなにくっついて来たら、俺、君になにするか分からないよ?」
本当に余裕なんかこれっぽっちもなくって、今にも君に襲い掛かってしまいそう。
「……よ」
ただの雄になってしまいそうな俺のもとに届いたのは吐息のような君の声音。
「ん? 何?」
「いい、よ……」
「ロイ?」
「……北見先生になら、何をされても」
ロイが俺の胸に頭を擦り寄せてくる。
だめだ。
そんな際どいことを言われ、こんな可愛い仕草をされたら、細い理性の糸が切れてしまう。
「ロイ……」
俺はロイの頬を大きな手で包み込むと、視線を合わせた。
「北見先生……」
大きな目からポロリと涙が零れ落ちたのを見た瞬間、俺の頭の中で理性の糸が切れる音がした。
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