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―8月22日金曜日―

「ゴメン、待たせたね」 「ーッス!」 残業が少し長引いた為駆け足で出てきた直弥を、大介は昨日とうって変わった笑顔で迎えた。 「何処へ行こう?」 「えーーーーと」 大介は天を仰ぎ、唸っている。決めあぐねているのか、暫く固まったままだった。 「あ!」 「何処だい?どこでもいいよ」 「ナオヤさんの、家は?」 「え、」 大介に指された指先を直弥は凝視し、動きが止まった。 「だって、どっか食いに行くのも時間遅いし」 「……」 「ピザとか取りゃ安くつくし、財布の心配しなくて良いだろ」 「……」 「あのさー。オレ、ス……」 「ストーカーだなんて思ってないって!」 眉をしかめ黙りこくっていた直弥は、大介の不安げな言葉をすぐさま否定した。 「だったらさー」 「突然言われても、部屋掃除してないしな」 「前行った時も、突然だったろ」 「あ、あの時は!」 「俺は散らかってても、全然気にしねーし」 「……判ったよ」 反論を失い、直弥は渋々頷く。 別に大介を家に招き入れるのが嫌な理由はない。 ただ、遙平という存在を知られている今、思わぬボロを出しかねない自分に自信がなく戸惑われた。

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