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9月1日 始業式

 久しぶりの学校への登校は、少し緊張しちゃって、電車を降りて随分足が重かった。  少し歩くだけで、首筋に汗が伝う。  夏の間は冷夏だったって聞いてたけど、嘘みたいだ。  空だってまだ入道雲が頑張っていて、僕の肌はこんな少しの間にも、容赦ない太陽にじりじりと灼かれている。 「ふぅ……」  大きな息を吐いた時、漸く校舎が見えた。 「おはよう」 「あぁ、おはよう」  行き交う奴等も、学校も何一つ変わっては居ない。  僕はやっと心に余裕が出来て、先を急いだ。 (早く、会いたい)  その思いだけを胸に。 目を細めて歩いた陽の中から、急に薄暗い校舎に入り、前がチカチカしてよく見えない。  自分の上履き入れに辿り着いた。 「ーーーッス!」 「イッタ!」  容赦ない力で突然頭を叩かれ、倒れそうになった。 「榮、ひっさしぶりだな!!」 「大ちゃん……」  心の準備をする間もなく、目の前に現れた。  会いたくて会いたくて、仕方が無かった奴が。

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