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2月10日火曜日

 今日学校は休みで、試験で校舎には入れないから、部活だけのために部室直行で登校する日だ。  授業もなく、朝のいつもの時間でもない登校。いつもなら楽しみの日、だのに。  榮の足取りは重い。  寒波とやらで、朝からちらつく雪と寒さに更に気分憂鬱でうんざりしながら、進まない歩を進める。  ポケットに大介の 忘れ物 を携えながら。  大介と朝連絡を取りあいながら、どこかで待ち合わせでもしたかったけれど、肝心の携帯は自分の手元にあるから出来やしない。  ゆっくり来たとはいえ、部員の皆が来る前にやり取りできりゃな、と思い少し集合の時間より早く来た。  大介が遅くても部室で時間つぶし、待てばいいかとおもいつつ…… 「え、」  遠目でも見つけた。誰も居ない部室棟の一画、佇んでいる一人の姿。 「榮ーーーーー!!」  向こうは榮の姿を見つけるや、大きく手を振って出迎えてくれて。  寒風吹きすさび粉雪舞う中、室内にも入らずに……  (いつから待ってた? 何をそんなに待ってた? 大ちゃん)  自分の名前を呼んでくれているけれど、決して自分ではない、物を待ち焦がれていた大介の姿を、榮は白い息を多めに吐きだし、視界からかき消した。 「榮、ありがとな! マジ感謝!」  大きな口を開けて、嬉しそうに満面の笑みで出迎えてくれた大介の髪先は、凍っている。  「ほんとに拾って貰えて、助かった! それ無くなったら……俺……」  榮と大介の目は合わず、大介の視線は それ と称した物を、無意識で探しているのか榮の手元を彷徨っている。 「寒いし、早く入ろ。中で」   榮は、大介の視線ごと部室に招き入れた。

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