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2月13日金曜日
祝日前の 「バッチい」「汚い」「ボロボローー」コールから
「おっさん」「おっさん」「おっさん――」の大合唱に歌詞は変わって、大介は部員という名の悪友にからかわれていた。
「何ーー?! おっさんじゃね―し!」
大事そうに、大きな掌の中に握りしめられている黒い物体は、ピカピカだ。
ギャアギャアとした騒ぎ声は、いつも気にも留めない榮だったけれど
声の主役である大介の事が気になり、真面目にパソコンと睨めっこしながらも、部員アホ四人衆のやり取りを盗み見ていた。
大介の手中にある、騒ぎの元を見つめる。
(ほんとにすぐ買い替えたんだ)
祝日に買いに行った行動は明白で。
出会った頃から大介とセットで榮の記憶にあった携帯は、あっさりと新しいものにとって替わられている。
「にしても……大ちゃん、なんでそれ? そんなの誰も持ってないよ」
皆が言うとおり本当におっさんの型だ。榮は輪の中心の大介に、ぽつりともらした。
「誰も持ってない、おーー流石、榮! 良い事言うな!」
「僕は、褒めてないよ」
(今の言葉の何処をどう取ったら、良い事になるんだ?)
嬉しそうに、大きな口を開けて笑っている大介を呆れ顔で見た。
「そうなんだよ、誰も持ってねーだろ。学校でも、ほかの誰とも被らないだろ、これ!」
また嬉しそうに切れ長の目を細めて。いつも放り投げていたはずのアイテムを、大介はポケットに大事そうにしまった。
買った翌日の昨日は、大事すぎて無くすのが怖くて家に置いていたという。
携帯を携帯しないで飾っといただなんて、大ちゃんは流石やっぱりバカだと思う。
やっと買い替えたと思ったら、大成達の意見に大賛成の くそダサい それのどこがそんなに大事なのか。他の部員と共に、榮には理解不能だ。
「はい、みんないい加減明日の事真面目に……」
部室に持ち込んだパソコンと格闘しながら作ったプリントを、榮は皆に配りながら下らない話から現実の明日の話へと戻した。
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