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2月14日土曜日
「ダイスケ、ごめん。そんな考えてくれてたなんて。ダイスケに結局甘えてた。辛い思いさせてた。ごめん、違うんだ」
直弥は自分に預けられた大介の頭を撫でた。
「俺は、勇気がないだけなんだ。いつもいつも。今日ここ向かってる時は、漸く気持ち振り切って来たのに……お前に会ったらやっぱりビビッて」
「ビビる? やっぱり怖がってんじゃん。俺、絶対ナオヤさんに酷い事しねーよ! 下手かもしれねーけど」
「いやごめん、言葉が……違う。ビビってるていうか自分に自信ないって意味で。
もし、そういうことになった後、がっかりされたらどうしようとか……嫌われて、捨てられたらとか、大介と別れるとか、俺、考えられなくて……
そんな事ばっかり先に頭に浮かんで、手も足も動かなくなってる、ずっと。正直」
「それ、本気で言ってんのか?」
「今更取り繕っても仕方ない。今日もう正直になるって決めてきた。来てたのに、いつもと同じだったな。俺、ダメだな。ごめん。でも本心だ。今も、怖い」
「ナオヤさんは、こーいう事に対してやっぱり俺よりバカだ!」
撫でられていた手を取り、真剣な表情で怒鳴られた。
「俺はそりゃ最初は見た目で好きになったけど……今もどんなナオヤさんでも好きだしずっと変わんねーって!
ナオヤさん、さっき俺に『何もしてやれてない』とか言ってたけど、俺一杯貰ってるし、口ださないけど優しさだって解ってるし! そんなの、ちゃんと解ってるって!」
捩じり上げられた手が痛い。気持ちが言葉ごとに痛いほどに伝わってくる。
「なんで、そんな。俺が嫌うとか、そんな訳ないってなんで、なんでわかってくれないんだ?
どれだけ言えば、解ってくれる?
どうしたらわかってくれる?」
さっきと違い、大介に力任せのキスをされた。勢いでぶつかった唇が痛い。
「しなくても良いし、好きだって心から思ってるけど……いっそアンタにして、俺の気持ちは絶対変わらないって、安心してほしくなってきた。逆に俺にがっかりしても知らねーけど」
「……」
「なあ、俺の事イヤで避けてたんじゃないんだろ? そうだって今日解って、超嬉しかった」
「うん。俺、イヤどころか、ダイスケとの事……ずっと想像してきた。お前に知られたら恥ずかしいくらい」
直弥はバツ悪そうに微笑んだ。
「……教えてよ。俺に教えて。オレ、どうしたらいい? ナオヤさん、教えてくれよ」
温く冷えてきた浴槽の中で、どちらともなく足が絡められた。
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