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2月14日土曜日

 二人、観光地の足湯の様に並んで浸かった。 「風邪、ひくなよ」  雪で濡れた髪を、長い指で梳かれる。  湯気が立ち込めているとはいえ、至近距離で容赦ないガン見をされ、直弥は恥ずかしさで身を縮める。   髪から首筋に移動していた大介の指が止まった。    「ナオヤさん……俺、怖い?」 「え?」  息がかかる距離で覗きこまれ、視線から逃げられない。 「前から思ってたけど、いっつもこんな感じになるし」  「いや、そんな……」 「だれも、取って食わねーよ」 「……」 「もし食いたいっていくら思ってたって、したことないからやり方わかんねーし」  大介は笑った。けれどいつもと違い、弱弱しい笑い声で。 「ダイスケ……」 「ナオヤさんが、俺とそういう事……すんのいやだったら、俺は何もできなくてもいい。一緒に居れるだけで、良いんだ。 聞き飽きたかもだけどホントに、ずっと、大切にする」  乾いた音を立てて、大介は言葉通り直弥に優しくキスをした。   「二人で話した事なかったけど、ずっと思ってた。正直気になってた。 ただ、今回は……今日の事決めたとき、二人で同じ気持ちなのかなって……それがめちゃくちゃうれしかったんだ。 でもやっぱナオヤさん元気なくなったり固まったりするから、なんか俺だけ浮かれてんのかなとか、不安で。 だから、二人で思わなきゃ意味がないっていうか……さっき、来てくれて気持ち聞いて嬉しかったけど、ナオヤさんがそういう意味で来たんじゃなかったら、全然それでもいい。俺」  大介が直弥の肩口に顔を埋める。  「嫌だったら、俺、何も……」

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