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2月19日木曜日

「あーー」  予感はしてたけど  そうなるかもと薄々おもってたけど  自業自得だけど 「風邪ひいた……」  直弥は、なんとか自宅に辿り着いた。  誰のせいでもない。自分のせいの何物でもない。 (あんな事すりゃ、そりゃおかしくなるだろ……)  家に着くと、一気に気が抜けた。  靴をそろえることも出来ず脱ぎ散らかし、廊下の壁によっかかりながら歩を進める。   ――極寒の雪山に、着の身着のまま軽装で乗り込んだ。  精神的に高揚していたからか、居る時は全然平気だった。翌日雪山を去る時も。  ところが、月曜から寒気がした。  部屋も会社も雪の降ってない街も、何故か雪山より寒く感じた。   喉がおかしく感じたのは、火曜。  声が出にくい。早く寝た。  昨日は、病院にも行った。薬も飲んだ。  だのに、一向に回復しない。  それどころか、日に日に悪化している気がする。  昔は調子が悪くても、一日爆睡すれば復活していた。  年々、弱っているのは気のせいだと思いたい。  声を聞かれるとバレるから、「忙しいから」とかこつけて、大介とは今日までメールだけでやりとりした。  メールの様子からも、土曜のあの夜の事があるからか、大介は照れている感じで。  大介は訪れはしてこず、直弥的にも救われた。  会いたいけれど、直弥自身も顔を合わせるのは気恥ずかしかった。  それよりなにより、風邪を引いていることをばれるのが嫌だ。  もし解ったら、きっと大介は自分のせいだと思うだろう。悲しい顔は見たくない。   会社にも頑張って行った。こんなことで休んだら社会人失格だ。  部長は嫌いだけど、もし風邪を引いた原因がバレたら怒られてもしょうがないと思う。  高校生おっかけて雪の中ホテルに……後悔は微塵もないけれど、我ながら感情に支配されていると思う。  だから、週明け普通の生活に入った平日は、真面目に社会人として頑張った。  病院に行ってインフル検査を受けて「違う」と伝えたのに、マスクはしてても社内では邪険にされ…… とりあえず、営業車で大半を過ごした。 (それもこれも、もう一日頑張れば……)

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