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2月23日月曜日

   一週間、病院に行っても薬を飲んでも何をしても治らなかったのに。  大介と一緒に寝て、起きたら……治った。   土曜、大介が来てから色々あって二人で眠り目が覚めた時、もう日が変わっていた。  直弥が目を開けると、大介は先に起きていた。  ベッドに招き入れられ抱き付いたそのままで、直弥を見つめていた。   直弥は目覚めた途端大介と目が合ったから、内心かなり驚いたけれど、表には出さず、大介の胸に顔を埋めた。   大介がこの家で初めて添い寝してくれた時も、”一晩中顔を見ていた”と言っていた事を思い出し、また照れた。  漸く二人で起き上がった時、寝る前に比べ大介も幾分元気にはなっていたが、罪悪感が未だ拭えていないのか、少し神妙な面持ちで…… だけど、一緒に寝たら風邪が良くなった旨を伝えると酷く嬉しそうで、漸くいつもの笑顔を浮かべ、帰って行った。   昨日、大介は無断外泊したのを、怒られた様で、日曜は一日家で大人しくすると連絡があった。  それでも、『泊まって一緒に寝て良かった嬉しかった』と、直弥が止めるまで同じ言葉を繰り返していた。  直弥も嬉しかったけれど結果にやはり反省し、養生しながら一日一人で過ごした。     *  *  *    今朝出勤し、会社に足を踏み入れてから、書類が溜まった机の整理をしている時も、朝礼中も……四六時中、視線を痛いほど感じる。  一秒たりとも視線の主を視角に入れず、早く外へ出ようと心に決めた。   漸く息が詰まる空間から逃れられると、腰を上げたとき 内線が鳴った。 _「治ったようで、良かったな」   注ぎ続けられた熱い視線とは真逆の、温度の無い声が受話器から聞こえる。  直弥は驚いたけれど、以前の様に電話の主に振り向きはしなかった。 _「携帯、商売道具だろ、迂闊な事するなよ。気をつけろ」  嫌味半分心配半分の言葉は真っ当で、耳と胸が痛い

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