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2月23日月曜日
――遥平の声を聞いて、糸を手繰り寄せられるように思い出された。
遥平と付き合っている頃、風邪を引いたら「近づくな」と言われていた。
理由は、単純にうつると困るから。一緒に引いたら万が一でも関係がバレるから。
社会人で、人知れず付き合っている関係として、その理由と行動は正解で、何一つ間違ってはいない。
遥平に悪気が無いのも解っている。理路整然とし合理的で正しい結論を導き出す。そういうやつだ。
同じ理由で遥平が風邪をひいても遠ざけられ、看病もさせてはもらえなかった。
理由は理解できるし正しいと思ったけれど……感情は別だ。決して口には出せなかったが、女々しいだろうが寂しく思っていたし、身体が弱ると心も弱る。
優しくされたいと心の何処かで望んでた。
――だから、遥平と付き合っている時は
風邪を引きかけたら冷たくされるのが嫌で、なるべくバレないよう引いてない振りをした。
――今は、大介と付き合って
風邪を引いてない振りをしたのは同じだれど、優しくされすぎて心配かけたくなくて引いてない振りをした。
手にある内線の受話器と、ポケットにある携帯を交互に見遣り、直弥は少し笑った。
「心配してくれて、ありがとう。もう大丈夫だから」
_「……」
「あ、お前にこないだ言われて返事返せてなかったけど……俺、今 大満足 してるから」
以前、内線で”高校生のガキ満足させてくれないんだろ”と問われ、正直、返事できずにガチャ切りした。
今日、直弥は遥平に一言告げ、ゆっくり受話器を置いた。
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