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3月14日土曜日

 直弥は大介の表情が見たくなり、振り返った。  突然振り返った直弥に驚きながら、大介は抱きしめる腕に力を込めた。 「……いや、将来さ。ナオヤさん、俺との関係がバレたら……アンタの性格上、会社に居づらくなるかもだろ? もしそうなったとき、俺だけ働いて俺に食わせて貰うとか、これもアンタの性格じゃ絶対嫌がるだろーなと思って。 だから、もし直弥さんが会社辞めた時……俺店持ってりゃ、世間体とか気にしねーで、一緒に働けるかなーとか……思って」  透き通るような真剣な瞳で、告げられた。 「あ、でもこんな事、親父にはまだ言ってねーから安心してくれ!    それに居づらくなる前に、ナオヤさんぶちょーにいじめられて会社嫌になるかもだし。 それに……格好良いこと言ったけど、俺アイツ……が居る所に一生居て欲しくねーーし!   だからいつ辞めても大丈夫な様に俺、するから。そう思って働いてたら気が楽だろ? な?」  冗談めかして照れた大介の癖のある笑い声が、背中を通して直弥の全身に響き染み渡る。 「あぁ~~~~」  直弥は抱きしめられていた腕を解き、全身反転させ大介にの首に抱きついた。 「お、ぉい……」  大介は直弥を受け止めたまま座椅子ごと、倒れた。    ――突然の将来の話  まだ高校生、一人夢に夢見てるのかと思ってた。  全然違っていた。自分を恥じたい。  俺の事 二人の事を考えてくれていた。誰より、俺より、拙いなりに一生懸命。 (こんなに甘やかされて、俺……) 「ナオヤさん? どしたんだよ?」  大介はひっくり返ったまま驚き、抱きついたままの直弥に問い掛けた。  大介の首筋にしがみつき、緩んだ表情を見られたくなくて顔を埋める。 「……サラリーマンを駄目にする、ダイスケ」  

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