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4月8日水曜日

「榮、ウーーーッス!!」  校舎に入り、上履きをはきかえようとしたところで、羽交い締め※にされた。 「だ……いちゃん、」  春休み、部活以外会わない日ごと、心の中を占拠している大介を排除しようと努力していたのに。  久しぶりのスキンシップで、榮の心中はときめきと動揺がMAXになる。 「やめてよ……」  薄く筋肉のきれいについた腕に、纏わりついていたい感情を押し殺し、榮はゆっくり振り払った。 「ありゃ、ずいぶんご機嫌斜めだな」  背後から正面に回り込んできて、顔をのぞき込まれる。  ひょっこり至近距離に現れた大介の顔に、榮は気がつくとやっぱり見惚れてしまっていた。  嫌いになりたい思いと反比例に、目の前の大ちゃんはどんどん大人っぽく精悍になってゆく。切れ長の目で見つめられると吸い込まれてしまう。 「あ、判った。俺とクラス離れたからだろ。寂しいだろ、榮」  そうだった。三年、二人クラスは離れた。  去年の今頃もし大介と離れたなら、しゃがみ込んで立ち上がれなかったかもしれない。  だけど、今日は……胸をなで下ろしていた自分がいる。 (大ちゃんが、バカでよかった)  同じ文系だけれど、三年は成績によってクラスは振りわけられる。  榮と大介の成績は、かなりの差があったことも知っている。 「ぜんぜん、寂しくなんか……ないよ!」  榮は大介の顔を見上げ、若干睨みつけた。完全な逆恨みだと判っている。  「寂しくないのか? 俺は、寂しい。榮と分かれて寂しいけどな」 「なっ!」  至極真面目な顔で、大介に告げられた。表情から、冗談で無いことを悟る。 (どうして、そんな嬉しいことをさらっと言ってくれるんだょ) 「もう~!」 (こんな大ちゃんの性格が、大好きで大嫌いなんだ!)  榮は視線を逸らし、首を振る。 「ん? 榮、新しいクラスんなるし、じょーちょふあんていなのか? 大丈夫か?」  長い指で頭を撫でられた。 「誰かにいじめられたら、すぐ言って来いよ。俺は榮にそんなことする奴、ゆるさねーから」 「あ、ありがと……」  大介の思いやりに、素直に嬉しさが勝ってしまい、お礼の言葉を振り絞る。 「あ、でもちょっと安心したんだ。さっき榮のクラス見たけど同好会のやつら誰も一緒じゃねーし。お前だけ頭いいから。俺が榮の友達把握してる奴もいなくて心配だったんだけど…… 担任、杉崎先生だったぞ! 良かったな! 榮! 安心だな!」

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