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4月28日火曜日(別)

/505ページ 「お疲れ様」 「お疲れ様です」  外回りから帰ってきた遥平は、逐一オフィスを見渡した。  元気よく迎え入れられた挨拶の声にもその席にも、探している姿は居ない。 「田辺は?」  直弥の部署に行き、念の為に聞いてみた。 「定時で帰られました」  まだ15分も過ぎちゃいないのに。 (あの交差点で信号に捕まらなきゃ……)  一度ひっかかると全てのタイミングがズレる信号のせいで、帰社が遅れた。遥平は静かに歯噛みする。 「後輩より先に帰るなんて、悪い先輩だな」  入ってきた新入社員に遥平は告げた。 「いえ、『今日は用事があるからすまない』って、何度も謝られたんです」  新人は困った顔で笑いながら、直弥の様子を告げてきた。 (だろうな)  想定の範囲内だ。  ただ間に合わなかった事に、しくったな、と冷静に思う。 (入ったばかりの後輩に頭を下げて急いで帰るほど、高校生相手に、そんなに必死か)  直弥の事だから大方、嫌われたくない一心で、日々怯えながら付き合いを頑張っているんだろう。 ガキの様子を見ている限り、嫌われるどころか直弥自身がどうしたって手放しそうには無かった。  現に接触した時、ガキ本人が言っていた。 自信と余裕を持っても大丈夫なのに、直弥の性格がそうはさせないんだろう。  大丈夫だと、遥平は知っている。  だけど言ってやるつもりは、毛頭ない。  遥平と付き合っている間に、心配性で悲観的な潜在意識を植え付けた事に、少しは罪悪感を覚えるが、同時に優越感と達成感があるのも事実だ。 (そんなに、苦労無く……上手く行かれてたまるか)  遥平は左手に携えている紙袋に視線を落とす。

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