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6月3日水曜日
「昼から晴れて良かったな!」
「はい!」
手に持った季節に似合わない道具を各々片づけながら、部室に戻る。
全国絶賛梅雨入り宣言の中、卒業アルバムに載る部活の集合写真が撮影された。
皆がスキー道具を嬉しそうに持つ姿を、杉崎は久しぶりに見守っている。
一名は手ぶらの部員がいるが。
実質シーズンオフの自主練という感じの最近。
友達同士でぎりぎり五人でやってきた3年間、特殊な同好会だから、後輩も入らなかった。
全員が三年生の為、部室でミーティングをするのも久々だ。
「なあ、先生。どうなるんだ?」
一番後に部室に入った杉崎は、大介に問いかけられた。
「ん? 何がだ?」
「この同好会の活動」
「あぁ、先生も調べてみたんだけど、学校で前例がないんだ」
問われて、大介の言わんとすることがわかった。
杉崎自身も一応顧問という立場上、気になりしらべてみていた。
この学校の部活・同好会に、ウインタースポーツの部がそもそもない。
(俺が高校生時代なら、こういう形の活動は絶対出来なかったろうな)
かなりぼんやりとしてきた干支一回り前になる、遠い記憶の高校時代を振り返る。
学校自体、今より厳しく生徒も多かった。少子化で生徒個人の個性を尊重……なんて風潮も無かった。好きな事を出来たのは大学に入ってからだった。
杉崎と友人である大介の兄と、スキーだスノボだとハマっていたのも大学時代だ。
大介がテレビで見て面白そう、と思ったからやりたい! と言い出したクロカンも、小さい頃兄のしている事を、聞きかじって見てみたのがきっかけだろうと思う。
大介とは昔馴染みのよしみもあるが、そういう経緯だから、ほかの部員には関係はいわないが同好会立ち上げや顧問も引き受けた。
だけど前例がないから、活動の終わり方がわからない。受験生のみのこの部活。
「本当だな。どうする? もう、この同好会もお前等が辞めたら終わりだし、先生は最後まで面倒見るよ。だから好きに決めてくれて良いけど」
(でも、3年は……)
「進路を決めなきゃいけない大事な時だしな」
「うーーん」
大介はじめ、大成たちも唸って悩んでいる。気持ちはずっと続けたいんだろう。
2年以上見守ってきたが、本当に高校生か? と思う事で盛り上がり、じゃれあっている仲良し達だ。
クラスも違えば、これからの進路も違う。
気持ちと立場が伴わず言いあぐねているんだろう。
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