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6月4日木曜日 深夜
深夜
「よっし!」
家に持ち帰った3年生の担任としての仕事が一段落を終え、杉崎は今日作ったフォルダをクリックする。
今日部員の皆から預かった同好会の活動中に撮った画像が入ったフォルダ。
作成期限はまだだけれど、気分転換に楽しい写真データが見たかった。
画像を開く。
「もう懐かしい。そして、若いな」
杉崎は一枚一枚見ながら、自然と笑っていた。
たったニ年の間にかなり変わっている。
成長期の高校生の部員は勿論、三十路になった自分も、ニ年前は思っていたより若く感じる。
反射してモニタ画面に映り込む今の自分に気付き、少し笑顔が消えた。
画像は皆元気に楽しそうに笑っている。
杉崎は無意識に姿を探していた。
(あまり無いな。遠野の姿)
宿舎やグラウンドや……要所要所で撮っている、真面目な面もちで皆直立不動の集合写真には居た。
けれど、雪山の現地で撮った写真には榮の姿は無い。
「そうか。いつも待ってくれていたからな……」
あのときもこのときも、自分滑らないマネージャーの役割だった榮は、ゲレンデやコースなどには来なかった。
本人は運動が苦手で、参加する気はなかったようだ。
「あ……」
だけど、来ていた。
杉崎は思いだした。
呼んだ。今年は誘った。来た。そして撮った。杉崎自身が。大介のおっさん携帯で。
画像のリストをスクロールする。
大介から確実に今日貰った。最後に受信した。
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