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6月4日木曜日 深夜

「撮っててよかった」  杉崎は画面を見ながら微笑んだ。ゲレンデで、五人揃った姿。  おっさん仕様のガラケーとはいえ、大介は買ったばかりだと言っていた。最新のものだから画質は良い。  やはり、皆良い顔をしている。  揃った写真が撮れて、榮を呼んだのは正解だったと思えた。  後で筋肉痛だと言って泣いていた事は封印しても。 「?」  杉崎は画面を凝視した。  笑顔が、消えた。画像を出来る限り拡大してみる。  杉崎はピンポイントで、見たいところを中央に移動させた。 「……」  電源が入ったまま、杉崎はノートパソコンを閉じた。 目を閉じる。  記憶と、画像を照合する。 (合わない……)  人間の記憶の曖昧さに歯噛みする。  ましてや、今の様に注目すらしていなかった頃…… ――写真は杉崎が撮った。  その時は全く気づいていなかった。目にも入っていなかった。    今、その時の写真で発見してしまい、息が止まった。  初めて皆と同じ場所に来て、一生懸命滑る練習をしていた遠野。  同じフレームに収まっている。  大介の腕にしがみついている遠野の姿が。  他の四人とは全く違う方向を見ていて。  写メを撮る携帯のレンズなんて見ちゃいない。  傍らにいる大介だけを見上げ、見つめている。  画像を拡大した先には、その姿が鮮明に映し出されていた。

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