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7月25日土曜日

「ナオャ……さん」 「……」 「ナ、ナ、ナ……ナオヤ……あ~~~~!!」  床に頭を擦り付けて絶叫し、悶絶している恋人の様子を、直弥は感情を無にしながらただ見つめている。 「上手く言えなぃ……」  大きな身体に似合わず、両手で顔を押さえ恥じらいながら、こちらも似つかわしくない消え入りそうな声で大介は呟いた。 「もう、良いよ。またの機会に」 「ちょ、ちょっと待って……もうちょっと、練習、させてくれ!!こんなはずじゃあ!!」 「無理しなくて良いよ」  直弥はため息を吐き、少し笑った。 ――今日は、大介の誕生日。  受験生とは言え夏休みに入り、身動きも自由だ。  何処へ行きたいか、何が欲しいか。  一応ボーナスも出て、直弥も休みで動ける土曜日だから大介に聞いてみた。  何処かに行きたいという思いは高3の夏休み、先日の成績の話から遠慮しているらしい。  プレゼントは「要らない」という。  ナイナイ尽くしの大介に、首を捻った直弥の顔を覗きこみながら、大介は恥ずかしそうに小さな声でぽつりと言った。 「何も要らない。プレゼントの代わりに……俺18になったから、ナオヤさんの事、呼び捨てで呼んで良い? 呼びたい」  そう申し出た本人が、その一言が上手く言えず、目の前でのたうち回っている。  直弥は大介が凹んでる様子を、直弥自身もまあまあ凹みながら見守っている。

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