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7月31日金曜日

「アーーー……」  大介は返事の代わりに肩を大きく揺らし、声を上げて泣き始めた。 「泣かないって……我慢してたのに。アンタの、顔見たら、絶対耐えらんないから……顔見ないでやり過ごしたのに……」  そういえば、別れ話から大介は一度も顔を見せなかった。  泣きじゃっくりと共に、一生懸命話そうとする大介の頬を手さぐりでぬぐってやる。  直弥自身、先に泣いていた事すら忘れ、大介が心配になる。 「どうした?」 「去年と、あの時と……おんなじ……同じだけど、違う。 あの時は……アンタ泣きながら、アイツの……ようへいの名前呼んでたけど…… 今、俺の名前呼んでくれた」 「ダイスケ……」 「俺、嬉しくて」  直弥は二の句が継げず、ただしがみついた。  大介は泣きながら、再び歩き始めた。  嗚咽と肩で息をしながら、大の大人を背に足下ふらついても、直弥を背負って歩き続ける。  細く長い道のり  先が見えない暗闇の中  十二時をすぎて、ニ年目を迎えた。

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