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8月13日木曜日 2年目
”良い人、普通”
言われ続けて30年。慣れては居る。
自分は関係ないと判っても、この何ヶ月見続けたせいで、ここまで一人の生徒を観察してきた事がなかったからか……
生徒の視界にも入っていない教師の癖に、未だに勝手に心配し続けているし、観察する癖がついてしまっている。
思春期特有の物なのか性的嗜好なのかは判断が付かないが、十中八九、遠野はあの大介の事が好きなんだろう。
でも当の大介に、恋愛対象として相手にされている素振りは、ない。
――夏休み
遠野の提案で、解散せずに名前が残った同好会にかこつけて、杉崎が請け負って受験のための補習授業を行うことになった。
三年になり、急に進学すると言い出した大介の相手がメインだ。
遠野は親御さんの話では、名のある進学塾に通っている。のに、やりくりして同好会の補習会に日参している。
そんな遠野の様子を、もう観察する意味もないのに、無意識に目で追ってしまう。
やはり、いくら迷惑そうな顔をしていても、素っ気ない態度でも、遠野の瞳には、大介しか映っていなかった。
お盆明け、補習は再開される。
杉崎はその事を思い出し、一時でも自宅から早く逃げ出したかった気が削がれ、再び眠りに落ちた。
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