223 / 255

8月30日日曜日 2年目

――翌朝  直弥はふと目覚めた。  自分がいつ眠ってしまったのか判らない。  昨夜は 気を失った という感覚に近かった。  窓の外は明るく、雨音は聞こえない。  時間が過ぎ、朝が来たことを理解した。 (長い夜だった)  どうか眠って欲しい、という直弥の願いは叶わず、大介は直弥が知る間、起きていた。  大介は夜行性の野生動物の様だった。  息を潜め、視覚と聴覚を研ぎ澄ませ、身体だけは横たわらせ。  直弥は大介の眠りを確認してから寝ようと思っていたのに、結局大介より先に眠ってしまった。  不甲斐なさに、掌を見つめる。  昨日、掴んでいた大介の衣服の端は、直弥の手をすり抜けていて、もう傍らに姿は無い。   気怠くまだ覚醒しない頭と身体を起こすと 「おはよう」  僅かな物音に駆けつけたのか、半開きの扉の向こうから、大介が姿をのぞかせた。  直弥は大介が作ってくれた朝食を食べた。 「美味い。ありがとう」 と直弥が伝えると、大介は昨日から続く強ばった表情を幾分緩め、嬉しそうに笑ってくれた。  その顔を見て、直弥の緊張の糸も少し解れた。

ともだちにシェアしよう!