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8月30日日曜日 2年目
その後今年の夏の日常風景、テーブルに参考書と問題集が広げられ、二人で黙々と受験勉強をした。
直弥は何故だかいつもより集中力があり、質問に答えるべく没頭していると、隣からペンを走らせる音が止んだ。
直弥が見ると大介は、居眠りしている。
横顔が、少しやつれて見えるのは直弥の思い過ごしだろうけれど。
「ダイスケ?」
小声で呼びかけて見たけれど、頬杖を付き俯いたまま起きる気配は無い。
漸く鋭さが失せたあどけない横顔を見ながら頭を撫で、シャーペンを持ったままの指を解いてやる。
指と指が触れたとたん、大介はピクリと動き、ペンの代わりに指を握られ、直弥は驚いた。
大介の顔をのぞきこむと、寝ぼけているようで、うっすら開いた切れ長の眼には、ぼやけた直弥の姿が反射している。
睡魔と戦っているのか、また瞼は閉じられた。
「ナオヤさん……?」
「そ、そうだよ」
「ナオヤ……」
「あぁ、俺だよ」
「ナオヤ……居るの?」
「ここに居るよ」
大介は直弥に倒れるように抱き付いてきた。
まだ寝ぼけているらしい大介の背中を、抱きしめ返した。
大介は手探りで直弥の頬を探し、見つけるとキスをしてきた。
辺りかまわず顔中にキスされている内、直弥の唇に触れた。
「!」
そのまま、直弥は座椅子ごと大介に押し倒された。
お盆のあの日、勉強途中同じ状況になったあの時。
大介を押し返した直弥の腕は、今は大介の背中に回したままで、大介を受け入れた。
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