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湊の過去-3
ぼくが水嶋くんを好きになるのにはそう時間はかからなかった。
毎日話して、勉強していたら。
気がつけばぼくは水嶋くんを好きになっていた。
「矢嶋ー。今度練習試合あるんだ!見に来いよ」
「いつ?」
「再来週の土曜日」
「大丈夫だよ!見に行くから」
水嶋くんはサッカーしてる時が一番輝いている。
楽しそうで。
「そろそろ始まるかな?」
水嶋くんに教えられた場所にやってきた。
「矢嶋ー!」
「蓮川くん」
「航汰の試合お前もきたの?」
「うん。水嶋くんに誘われたから」
蓮川くんは水嶋くんの幼なじみ。
ぼくとも仲良くしてくれてる。
因みに同じクラス。
勉強教えてるって水嶋くんから聞いたらしく話しかけてきたんだよね。
『なぁ、矢嶋!』
『何?』
『航汰に勉強教えてるんだって?』
『航汰?』
『あぁ。水嶋航汰だよ』
『そうだけど』
『あの馬鹿は一応幼なじみだから。あいつに勉強教えてくれてありがとうな?』
これがきっかけで蓮川くんとも話すようになった。
「じゃあさあとで航汰のとこ行かない?」
「いいの?」
「いいよ。矢嶋来てたら一緒に来いって言ってたし」
そして。
試合が始まった。
最初は水嶋くんたちが有利だったけど、だんだんと相手に攻められはじめた。
そして。
後半戦。
ラスト1分。
水嶋くんがぼくを見ていた。
そんな気がしたから口パクで『頑張れ』って言った。
そして。
ギリギリ勝った。
「矢嶋、行こう」
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「蓮川です」
「入ってこいよ」
ぼくたちは水嶋くんたちサッカー部の控室に入る。
「矢嶋!さっきはありがとうな」
「え?あ、見えたの?」
「おぅ!」
蓮川くんはこのあとバイトらしくしばらくして帰ることに。
ぼくは気づきもしなかった。
蓮川くんがぼくに向けていた微妙な視線も。
水嶋くんが、何故ぼくを控室に連れてくるように言ったのかを。
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