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弟の悦び12

***  俺が音楽室を退出してから30分後、時間きっかりに先輩は出てきた。扉を開ける音に反応して振り返ると、スマホを片手になにか操作している姿が目に留まる。 「若林先輩、辰之は……」 「腰が砕けてるから、すぐには動けないと思う。一応服装は整えておいたから、誰かに見られても大丈夫だ」 「腰が砕け――」  先輩の信じられないセリフで俺が驚きの声を飲むと、いきなり親しげに肩を組まれた。近づいたせいでふと香ってくる匂いに動揺を隠せなくて、心臓が痛いくらいにバクバクした。 「辰之くんマジでヤバいわ。ありゃ相当の名器だぞ!」 「はぁ……」  耳元で嬉しそうに語られても、俺としては同調するには無理な内容だった。黙ったまま、眉をしかめるしかない。  先輩は持っていたスマホにイヤホンを差して、片方を強引に俺の耳に突っ込む。もう片方は自分の耳にセットし、意味ありげなまなざしを注いだ。俺は顎を引いてその視線を受ける。 「本当はハメ撮りしたかったんだけど、暴れる相手にそれは無理だったからさ。録音だけにしたんだわ。おまえのミッションをこなした証拠を残すために」 「そんなもの必要なかったのに」 「俺の仕事の評価を、ぜひとも黒瀬にしてほしくて。まぁ聴いてくれよ」  軽快な指使いでスマホを操作すると、イヤホンから聞き覚えのある声が聞こえてきた。 『やめてくださ、そんなことされたらっ、ンンっ!』 『本当はお兄さんにしゃぶってほしかったんでしょ? 俺が代わりでも、かなり感じてるよね。ビクビクしてる、ココもナカも』 『兄貴じゃなきゃ…いっ、いゃだ』 『そう言いつつも、腰が動いてるじゃん。はじめてだろ、口でされるの』  俺はこれ以上聴いていられなくなり、耳からイヤホンを外そうとした。それを察した先輩が、その手を力ずくで止める。 「黒瀬、ここからがいいところなんだよ」 「もうわかりました。充分です」 「いいから聴けって」  目じりを下げた異質な笑みに、口を引き結んで顔を背ける。イヤホンからは相変わらず弟の啼き声が続いた。 『兄貴以外を挿れたくないっ、やめて!』 『そのお兄さんに俺は頼まれてるの。それにイキたくてたまらないでしょ。ココをこんなに、いやらしく濡らして。さっき舐めて綺麗にしたはずなのに感じまくって、ぐちゃぐちゃになってるじゃないか』

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