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弟の悦び13
『あ゛あ゛あ゛ぁぁあ…んあっ! ううっ!』
弟の喘ぎ声にまじって、床を蹴るような音も微かに聴こえた。
『奥まで挿入した瞬間にイっちゃったね。トコロテンするとか、めちゃくちゃかわいい』
『うっ…も、いやだ……。こんなの、僕は兄貴だけなのにっ…ひっ、動かさないで』
『ああ、いい締めつけだ。俺をこんなに感じさせる辰之くんを好きになりそうだよ』
「あっあっ…はぁあっ、宏斗兄さんっ…んうっ!」
『そのお兄さんよりも、君を感じさせてあげる。辰之くんの気持ちいいところはどこかな?』
『やだ、奥突いちゃぁっあ! くっ…乳首も、触っちゃいやっ!』
抵抗する声と一緒に、卑猥な水音も延々と聞こえた。そのせいであのときのことを思い出し、下半身が反応しそうになる。投げ捨てるように、慌ててイヤホンを外した。
「黒瀬、次回はいつどこでヤる?」
「は? 次回?」
先輩からの問いかけに、頭がついていかない。イヤホンを外してるのに弟の啼き声が耳から離れず、不機嫌な声色で反応してしまった。
「これ聴いて、黒瀬もヤりたくなったろ。名器を持つ弟を、ふたりでかわいがってやろうぜ。気持ちよさもきっと2倍だ」
強引に組まれた先輩の腕をやんわり退けて、逃げる感じで距離をとる。
「黒瀬、3Pしようぜ。それとも辰之くんを独り占めにする気なのか?」
「俺はアイツに手を出すつもりはないです。兄弟でそんなこと、しちゃいけない……」
首をしっかり横に振りながら先輩に伝えた。俺の必死な様子を見た途端に、お腹を抱えて笑いだす。
「黒瀬は頭が堅いな。別に兄弟だっていいじゃん。俺としてはイケナイコトしてるみたいで、すっげぇ燃えるのによ」
しらけた笑いを皮膚の上に浮かべた先輩はイヤホンを外して、スマホごとポケットに雑にしまい、俺に背中を向けた。
「黒瀬にその気がないなら別にいいや。個人的に俺から誘うし」
「えっ?」
「一回コッキリにしたくない付き合いにしたくてさ。俺が辰之くんもらう」
顔だけで振り返った先輩の目は真剣だった。賛成も反対する言葉すら出せずに、微妙な表情で佇む俺に向かって右手を振り、目の前から大きな背中がゆっくり消えていく。
先の見えない未来に、不安しかわかなかった――。
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