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弟の悦び15

 してやったりな顔で見上げる弟の瞳に映った俺の顔は、動揺しまくったもので、情けなさを思いきり晒していた。 「僕、兄貴に言ったよね『こんなことして本当に後悔しないの?』って。だけどその顔、すっごく後悔してるでしょ」 「してないっ! いい加減にしろ!」  ねばっこい視線から逃れるべく顔を前に向けて、弟の腕を振り解こうと両腕に力を入れたときだった。弟の片手が俺の下半身を唐突に掴み、ぎゅっと握りしめる。 「なっ!?」  耳裏に弟の吐息がかけられたと感じた刹那、生暖かい舌先が上下にそこを舐めた。 「うぅっ!」 「ねぇ兄貴、ピアノの裏に盗聴器をしかけたりしなかったよね?」  囁かれた言葉に、目を白黒させながら答える。 「なっなんだ、よ…それは」 「本当に知らない?」  弟が喋るたびに舐められたところに息がかかって、くすぐったさとは違うなにかのせいで、肌がぶわっと粟立つ。感じたことを悟られないために、口を引き結んでだんまりを決め込んだ。 「兄貴がしかけるわけないよねぇ。若林先輩はスマホで録音していたから、わざわざあそこに盗聴器をしかけるのはおかしいし。まぁ音楽室の防音を考えたら、僕ら以外でも使ってる生徒や教師がいても不思議じゃないけどさ」  弟の柔らかい唇が、うなじに押しつけられた。それと同時に握りしめられた下半身がやんわりと動き出し、俺をここぞとばかりに感じさせる。 「やめ…ろ。こんなこ、とっ」 「兄貴のおっきくなってるのに、どうしてやめなきゃダメなの?」  俺は持っていたカバンを放り出すように床に置き、弟の手を両手で外した。 「おまえにこんなふうにされるの、すっごく嫌なんだよ。俺たち兄弟なのに」 「兄弟じゃなかったら、兄貴は黙ってされていたのかな」 「されないって。男同士だろ!」 「僕を穢した兄貴に、拒否権があると思うんだ?」  妙に明るく問いかけた弟は、着ていたシャツのボタンを手際よく外して、はらりとその場に脱ぎ捨てる。目の前に露にされた上半身には、キスマークが点々とつけられていて、音楽室での濃厚な行為をまざまざと見せつけられた気分に陥った。 「兄貴が手引きした男に僕は襲われた。それがどういう意味なのかわかってる?」

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